Chapter 49 - エピローグ~故郷~
それから、人間が動物を使って起こした事件は聞かなくなった。
ベスタの死によって、まつろわぬ民は、きっといなくなったのだ。
「ワシが知っとる知識を、今のうちに全部伝えておくのじゃ」
「おいおい、そんなしゃべり方だけど、お前、まだ若いからな……」
バズは、コルリスの街で暮らしている。
自ら絆の民であることを公にして、リーダーとして生きていく決意を固めたのだ。
人と動物が、これからも協力し合いながら生きていけるように。
「今日は、どこまで行こうかな」
「フムフム、おいしいヒマワリの咲いているところがいいフム」
ヴィオとフムスは、バズと協力しながら、絆の民を探す役目を引き受けた。
どこかで家族が生きているかもしれない。そんな希望を持ちながら。
*
メルとフロールは、薬の知識を生かして、病気の人や困っている人たちを助けながら、無事ポルテ村へと帰ってきた。
「やっと、帰ってきたね。メル」
そう言ってフロールは、隣にいるメルの手をそっと握った。
「うん……いろいろあったね、フロール」
メルも、その手を優しく握り返した。
故郷に戻ってきたメルは、一通り懐かしい風景を眺めたあと、思い出したように森のほうへと目を向けた。
作業場へと続く森の入り口。
どこか寂しげな、けれど優しい秋の風が、頬をなでていった。
作業場へと続く――森の入り口。
そこに、こちらを見ているひとつの姿があった。
それは、ゆっくりと近付いてくる。
「娘を救ってくれて、ありがとう――メル」
秋風に乗って、懐かしい、そしてあたたかい声が聞こえたような気がした。
その白は、忘れられない色をしていた。
メルは走り出した。
その白も走り出した。
飛びついてくる白を受け止めて、メルは強く抱きしめる。
「ただいま――そして、おかえり……アウラ!」