Chapter 15 - いいわね?
立ち上がれるまで回復したメルは、マリーの部屋をノックした。
「どうぞ」
マリーの顔色は青白かった。でも、その笑顔はメルを安心させるには十分だった。
「母さん、ありがとう。それから……ごめん」
「あなたの母親だもの。あなたのすることはお見通しなのよ」
「でも、母さん、もうあんな危ないことはしないで」
「分かったわ、約束する。それから……私のことは心配しなくていいのよ。お向かいに世話焼き夫婦が住んでますからね」
そう言って、マリーはメルの手を握った。
「うん……」
「でも、母さんが助けに入らないといけないようじゃ、まだまだよ。ジンクにしっかり鍛えてもらってから旅に出ること、いいわね?」
「うん……」
「まずはしっかり休みなさい」
「うん、母さんもね」
*
三日後から、ジンクの特訓が始まった。
「いいか、メル。お前は優しい。それは、悪いことじゃない。だから、お前の戦い方を身に付けるんだ」
そう言ってジンクは、アウラのサポート役として戦う方法をメルに教え込んだ。
狩りで学んだ技術を生かして、後方から弓を使え。
毎日のように森を駆け回った経験を生かして、常に自分に有利な場所を把握しろ。
アウラが攻撃しやすいように、ナイフを投げて相手の体勢を崩せ、などなど……。
ジンクの指導のおかげで、次第にメルは、アウラとの息の合った攻撃ができるようになっていった。
フロールは、時折その様子を窓から眺めては、ため息をついていた。
なんで私、オオカミにやきもちをやいてるんだろう――。
私だって、薬草とかキノコとかに詳しいんだから……メルの役に立てるんだから。
メルのことを応援したいけど、会えなくなるなんて考えたこともなかった……。
真剣に取り組んでいるメルを見れば見るほど、フロールは、胸が苦しくなった。