1話「弓兵は異世界に降り立つ」
|Search《サーチ》 |Bullet《バレット》 |Hunter《ハンター》 |Destroy《デストロイ》。
通称「|SBHD《SBハード》」
仮想空間を現実のように体感できるVR技術を用いて作られた、現代兵器がメインの今、最も人気があるVRFPSである。
SBHDは今では鬼畜ゲーとも言われ、敵の発見を表すS、銃の弾道を表すBそして敵を倒すことを表すHとD。
これらはサービス開始時、マップに隠れている敵を見つけられないプレイヤーが約6割、チュートリアルの的にすら弾を当てられないプレイヤーが約8割を超え、敵がリアルすぎて殺せないプレイヤーが約3割というFPSのゲームとして致命的な欠点であった。
しばらくしてこの鬼畜ゲーの呼び名として「見つからない、当たらない、殺せない」これらを合わせてSBハードと言われるようになった。
しかし、そんな鬼畜ゲーと言われるゲーム内において、森の死神と恐れられる凄腕の1人のプレイヤーが存在する。
「畜生っ!「ダダダダダダッ!」なんで当たらねぇんだ!」
「ビュンッ!………グサッ!」
1人の男の足に矢が刺さる。
「うっ!くそ!「ダダダダダダッ!」」
対戦した者が言うには噂のプレイヤーは真っ白な戦闘服に白のフード、白の口隠し、白の手袋、そして森に溶け込むためにギリースーツを着ているという。
さらには現代兵器がメインのSBハードにて、全プレイヤーでただ1人弓を扱うらしい。
身長は150cm後半くらいで他のプレイヤーの前では喋ったところを誰も聞いたことがない。
「何処だ!どこに行きやがった!」
「………」
そして全対戦者が恐れている噂が………プレイヤーを見失ったら最後、ゲームの決着がつくと言われている。
「3…2…1…弾着………グサッ!」
「うっ……くそが……」
〈対戦終了………勝者【レリィ】〉
「退屈な試合ね……やっぱりロンドに行かないと駄目かな。」
そのプレイヤーの名は【レリィ】。
全世界でプレイされている鬼畜ゲーSBハードの頂点に君臨する世界最強の弓使いである。
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「最近、強いプレイヤー少ないわね……
やっぱり皆ロンドに行っちゃうのかな。」
私の名前はレリィ。本名は|赤坂 玲《あかさか れい》。
年齢は15歳で身長は156cm、体重は……これはいいわね。
現在、私は悩んでいる。対戦者がいないのだ。
SBハードには3つのモードがある。
1000人vs1000人で行われる【モードレイズ】。
6人1チームで16チーム、2人1チームで24チーム、自分以外敵の計100人などで行われる【モードロンド】。
1vs1で3回戦で2回先取の【モードオーズ】。
私は現在モードオーズにて対戦したりするのだけど、マッチした瞬間に回線切られたりする。
これは私が世界一位になったことと関係がある。
世界一位はモードによってハンデがついてしまう。
これは初心者にも勝機があるようにした配慮だ。
モードレイズなら装備数制限や弾薬制限。
モードロンドならマップに一定間隔で自分の現在地の表示。
しかし、この中で唯一ハンデがないのがモードオーズなのだ。
ハンデの中やり続けると変な癖がついたりするため、私はモードオーズしかやらない。
他のモードで上手くいかないプレイヤーがモードオーズに来たりするが、私を見ると世界一位ということを大体のプレイヤーは知っている。
そのため、回線切りが多い。
しかも、強いプレイヤーはだいたいがモードロンドに行ってしまう。
私と戦うのは初心者か自信過剰のプレイヤーくらいだ。
「つまらないな………今日はもう落ちよう。」
現在の時刻は深夜2時。私はSBハードからログアウトしてベッドに横になる。
「明日はモード変えてみようかな……」
私は電気を消すとすぐに意識は夢の中でした。
次の日私は学校から帰ったらいつも通りSBハードにログインする。
両親は遊んでばっかだったため、現在はおじいちゃんの家で暮らしている。
まぁ今はこの話はいいかしらね。
「さて、ログインっと。………ん?」
あれ?メッセージ?私フレンドいないから運営かしら?
いま同情した奴は後でモードオーズ行きね。
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『赤坂 玲様』
貴方はこの世界を満喫していますか?
私なら貴方に最高の体験をさせてあげましょう。
覚悟ができましたら返信してください。
『異世界神』
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「なにこの胡散臭いメッセージは?
しかも、なんで本名しってんの?」
プライバシー守る気がないらしいね。
「でも、なんか怖いわね。
このタイミングでこの内容………
何か裏があるのかしら?」
確かに最近は退屈はしていたけど···このタイミングでこのメッセージは怪しすぎる。
しかも、異世界神って………
「覚悟ねぇ………まぁ本当に楽しいなら何処でもいいわ。」
信じてはないけど………とりあえず返信はしときましょう。………これでいいわね。
「さて、なにを見せてくれるのかし「ガタンッ!」えっ?…………キャーー!!」
なんでなんでなんで!いきなり床抜けたんだけど!あんなこと今までなかったじゃん!落ちてる落ちてる!
「ぐふぇ!」
痛い……痛いよ……いきなり落ちて地面に激突とか洒落にならないよ···上手く勢いを殺せたから助かったけど……あのままだったら絶対ミンチになってたわ……
「運営もちゃんとマップくらい作ってよ。全く……」
「………そろそろいいかな?」
「え?」
声がしたから見てみたら男の人がいました。全然気が付かなかった。
ちょっと気配が薄すぎますね。
「え、えっと。」
あれ?上手く話せない……あっそうだ……私、人と喋るの苦手だったんだわ。
「………なんか慌ててるようだけど大丈夫だよ。君が返信したからここにいるんだから。」
「えっ?どういうこと?」
あっ驚いて声出たわね。いつも出ないから助かるわ。
いやそうじゃなくて!
「返信したからってどういうこと?」
「そのままの意味さ。
君が私のメッセージに返信したから私のいる場所への道が出来たんだよ。………少し私の想像と違う形での登場だったけどね。」
そらそうさ。誰も道作ったと思ったら落とし穴ができてるんだから。
「で……本題なんだけど。
返信してくれたってことは私の誘いを受けるってことでいいのかな?」
「確かに私は楽しさを求めて返信したけど、具体的な内容を聞いてないんだけど?」
内容を知らないままは流石に落ち着かないしね。
受けて変なことだったら怖いし。
「そうだね。ならまずは内容から説明しようか。」
そう言うと男の人は近くにあった椅子に腰を掛けます。
私も近くにあった椅子にとりあえず座りました。
「まずはおめでとう!君は異世界に行く権利を手に入れました!」
「………は?」
なに異世界に行く権利って?
最近、良くある異世界転移とか転生系のお誘いってこと?
ますます怪しいわね………
「ハッハッハ!そんな不審者を見るような目で見ないでくれ泣いてしまいそうだ。」
あっ………意外と繊細な人なのかもしれない……
「とりあえず説明だけでも聞いてから判断してくれ。
さっき言った通り君は異世界に行く権利を手に入れた。
君の知識にあるラノベ?て言う本と大体は内容は一緒かな。」
そうなのか。まさか生きてるうちにこんな体験をするなんて。
………じゃあ、もしかして世界を救えとか言われるのかな?
やだな〜面倒くさそう。絶対やだ!
「………なんか勘違いしてるみたいだけど、特に君にやってもらおうなんて考えてないよ。
ただ異世界を満喫してもらえばいいよ。」
あれ?本当に自由なの?嘘じゃない?あっち行ったらなんかやれとか言われない?
「大丈夫だよ。実際、君をあちらに送るのは私の暇潰しみたいなものだからね。
君が何しようと自由だよ。流石に世界を破壊するなんて言ったら止めるけどね。」
大丈夫。私はそんな面倒なことはしない。
「で、せっかく行ってもらうんだから何個か特典を用意してみました!」
おぉ〜太っ腹〜。
「でも、特典の内容を話す前にまずはスキルについて話さないとね。」
スキル?よくある特殊能力的なやつかな?
「君の想像通りスキルはそれぞれの技術や能力をわかりやすく表示したものの装飾だよ。
そのスキルの中で私が特典として用意したのが3つあります!」
おぉ〜なんだろう?想像はつくけどね。
「まずは『言語解読』。
これはあっちの世界の全ての文字を会話や筆記を可能にするスキルだよ。」
コミュニケーションは大切ってことだね。
………私はそれには当てはまらない。
「2つ目が『アイテムボックス』。
これは君の知識の本によくあるアイテムを別空間に無限に入れることが出来るスキルだよ。」
これは普通にありがたい。装備の持ち運びが楽になって助かるわ。
「最後が『鑑定眼』だよ。」
鑑定眼?ラノベの鑑定と同じ感じのスキルかな?
「どうやら少し内容が違いそうだね。
あっちの世界にも鑑定のスキルはあるんだけどアイテム限定でスキル自体のレベルが低いと詳しくは見れないんだ。
しかし!この鑑定眼ならスキルレベルはないし人や魔物にも使えるから、簡単に言えば鑑定の最上位スキルだね。
………ちなみにこのスキルは君しか持たない予定だよ。」
………他の人にはバレないようにしよう。
身の安全が一番大事………
「以上が最初の特典かな。」
ん?最初?まだあるの?
「もちろん!これはあくまで初心者パックみたいなものだよ。」
ここに来てゲームっぽい言葉入れてきたね。
「さてさて次の特典は〜………スキル選択です!」
スキル選択?なに選べるの?
「そうだね。5つまでなら君の希望にあったスキルを探してあげるよ。」
スキルか〜そうだな〜。なら………
「私、弓をメインで使うんだけど何か弓使うのにいいスキルない?」
弓はいいぞ〜遠くからのへッドショットは最高に気持ちいい!
「弓だね。ちょっと待ってね!」
なんか本読みだした………スキルブック的な?
「あったよ〜!弓関係なら『弓術』と『遠視眼』かな。
弓術はスキルレベルに応じて矢が当たりやすくなったり、威力が上がったり、さらに遠くを狙えるようになるスキルだよ。
遠視は遠い場所も良く見えるようになるさっきの鑑定眼と同じ魔眼の1種類だよ。」
弓使いには最高のスキルだね。
「あと3つ何かあるかな?」
ならば………
「隠密関係で何か便利なスキルある?」
「隠密系ね。それなら調べるまでもないよ。
隠密関係なら『気配操作』『魔力運用』だね。
気配操作は隠密関係の最上位スキルで自分の気配も消せて隠れている相手の気配もわかる暗殺者なら誰もが欲しがるスキルだね。スキルレベルが上がれば目の前にいても気づかれないよ。
魔力運用は気配操作の魔力版。
魔力量もわかったりするから魔力管理も楽ちんだね!」
1つでスキル2つ分の仕事してるわね………まぁありがたいから貰うけど。
「あ〜あと最後のスキル枠だけど弓使いなら『罠作成』とかどうかな?」
………確かにSBハードじゃ罠には手を出してなかったわね。
「それでお願い。」
「了解〜したよ〜。」
これだけ貰えば死にはしないだろう。
「さて、じゃあ最後の特典を上げるよ〜。」
まだあるの?十分もらった気がするんだけど。
「君は貰ってればいいんだよ〜。貰えるものは貰っとけって言うでしょ?」
確かに言うけど………まぁいいや。
「最後の特典だけど……普通に君の希望を聞いてあげるよ。
そうだね〜3つくらいかな。」
もう疲れてきたからさっさといこう。
「じゃあ……身体能力をSBハードと同じにしてください。」
SBハードと同じ身体能力があれば100m5秒で走ったり、10mくらいならジャンプ出来るようになる。
「おけ〜じゃあ、せっかくだし容姿も同じにしたほうが楽だからやっちゃうね〜。」
なんか追加で身体イジられてるけど……疲れたよ……
「じゃあ次はなにかな〜。」
う〜ん………あっ。
「SBハードの装備持っていけますか。」
あれは私の宝だ。命とも言える。
「了解だよ〜だけど、君の弓や来ているものはいいけど、SBハードの武装庫にある重火器と弾薬は無理だからね〜。」
弓と|あ《・》|れ《・》があれば問題はない。
「じゃあ………最後のお願いどうぞ〜。」
「最後はSBハードのお金を異世界でも使えるようにしてほしいわね。」
もう欲しいものもないし、お金でこれでいいのです。
「わかったよ。それにしても貯めてるね〜。
5世代くらいは豪遊出来るくらいにはあるね。
お金と武装庫の重火器や弾薬以外のアイテムはアイテムボックスに入れとくね。」
さて、準備は完全に整ったわね。
「これで私が行うサポートは終わりだよ。
とりあえず、森の中に転移させるから後は頑張ってね。
私を飽きさせないでくれると助かるよ!
じゃあね……レリィ……」
えっ?なんで私の名前を……
私が後ろを振り返ると、そこはすでに木が生い茂る森の中だった。
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