Chapter 1 - プロローグ
『レンくんとカナタくんは本当に仲良しねぇ』
幼稚園の頃、先生達は僕等を見ると決まってこう言った。そして僕の右手をぎゅっと強く握りしめながら、恋も決まってこう返すのだ。
『オレ、大きくなったらゼッタイカナとケッコンするんだ! な!? カナ!』
満面の笑みを浮かべる恋とあの日の約束を、今でも僕の脳は鮮明に記憶している。いつだって、瞳を閉じればあの笑顔が瞼の裏に映し出される。耳を澄ませばあの時の無邪気な声が聴こえてくる。
そんな純真だった恋は、成長するにつれてどんどん大人びていった。見た目も、考え方や行動も。それに比べて僕は何もかもが子どもで、埋まらない2歳差への焦りと置いていかれる不安ばかりを募らせていた。
そんな悩める春の日だった。
『愛大、100歳まで一緒にいような』
今思えばちょっと笑ってまいそうな告白。だけど僕にとってはどんな言葉よりも嬉しかったし、幸せになれる魔法だった。だからずっと一緒だって、絶対離れないって僕も心に誓ったんだ。
なのに、どうして裏切るんだよ。
アンタ、最低だ。
告白から半年が過ぎたくらいから、恋が僕を妙に避けるようになった。
そして、見てしまったんだ。1番見たくないものを。
あの頃僕が、もっと大人だったら恋のことをちゃんと理解してあげられたのかもしれない。けれどやっぱり僕はまだ幼過ぎて、それ以上に……恋と向き合って自分が傷付くのが、怖くなった。
だから嘘を吐いた。
夏を迎える準備の為に雨が降り続く湿気の多い時期に、僕は恋との関係に終止符を打った。
好きだった恋も、自分も騙して。
僕は、もっと最低だ。
それから程なくして、恋は何も言わずにどこかへ引っ越した。