雨宿り(第一話)待たされている女

Section 10 - 第十章 氷とウィスキー

進藤 進2022/02/04 05:56
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マンションのリビングで、瀬川は礼子からの手紙を読んでいる。


テーブルの上には、この部屋のカギがスペアキーと共に置いてある。


今更ながら、失ったものの大きさに驚いていた。


女を愛していたと今、気づいたのである。


女は自分の衣類と小物の他は、全て置いていったようだ。


自分が買い与えた物ばかりだった。


誰もいない部屋で、瀬川は手紙を読んでいる。

 

男は苦笑した。

何か、肌寒いのだ。


こんな事ならもっと優しくしてやればよかったと思った。


男はコップに氷を入れ、ウイスキーを注ぐと静かに飲み始めた。


苦そうに顔をしかめた。

こんな時、男は飲むしかできない。


待ってみるか、と思った。


そう言えば、何年待たせたのだろう。


女の後ろ姿が目に浮かんでくる。


細い肩がいつも寂しそうに震えていた。


今は自分が寒さに震えている。


今日は何日だろうと、男は思った。


カラリ、と氷が溶けた。