ゼロからわかるストーリー創作講座

Chapter 3 - ストーリーを一言で表すなら

森本純輝2020/08/03 11:35
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ストーリーの創作は基本的に因数分解のような形式で作成することをおすすめする。

その方が体系的な引き出しを一目で分かりやすく生み出すことができ、また途中でわからなくなってしまっても、その図式を辿れば見えるべきものが見えてくるからだ。


因数分解ということは、元の一つの解が存在する。

それをストーリー創作に当てはめることができる。


ストーリーを一言で表現すると、どんな言葉が出てくるか?

筆者はそれは「変化」だと認識している。


登場人物が何を体験し、どんな行動を重ね、どんな結末に至るかでストーリーという流れの方向性が「変わる」からだ。

言ってみれば登場人物たちによって、一つの出来事が別の因果へと変容が生じることによる一連の出来事の連動性が成立するからだ。別の表現に換言すれば、ストーリーとは「一つ一つの出来事が連動性を持ちつつも、その内部がそれとなく変容していくシークエンス」の役割を果たすものだと言えよう。もっと簡略化すれば、ストーリーを変化と呼ぶ理由とはこのシークエンスそのものであり、「変化」という多様性をはらむ連動した一連のベクトルだということだ。


ストーリーをそのような意味で定義づけるとするならば、この一本の「川の流れ」をさらに因数分解、つまり具体的な構成要素に置き換えることができ、それは三つの項目に分けることができる。

おなじみの「三部構成」というものだ。

筆者なりの表現で書くと、それは以下のようになる。


①事態の発生


②事態の解明


③事態の収束


この「三部構成」に関しては非常に多くの見解があり、「この構成はもはや古い」と定義する方も多数いるようだが、その彼らが提唱する「七部構成」や「22段階構成」は筋は通っているものの、新米の読者にとっては非常にわかりづらいし、そもそもの本質的な部分において「三部構成」と何ら変わりはない。それに先ほどの因数分解の形式を取れば、彼らの言っていることが三部構成から成り立っていることが理解できて、合点もおそらくいくはずだ。


順を追って説明していこう。


①の「事態の発生」とは一つの出来事、つまり登場人物の身に危機的状況や問題が起こることを意味し、②の「事態の解明」とはその出来事が起こった真因、つまり、なぜそれが起きたのかの究明を意味し、そして③の「事態の収束」とはその問題を解決することを意味する。これが「変化」の内部構造であり、基本中の基本となる。


なぜ「変化」が起きるのかというと、出来事には原因と結果の両端、表現を変えれば始まりと終わりがあって、その二つは全く異なる要素を持ち合わせているからだ。ここでの要素とは出来事の内容を表す。

一つの要素が全く異なる要素に変わるのだから、当然その両端の間には「動き」がなければならない。つまり、ここで言うところの「変化」だ。


湖がいきなり海に変わったりはしない。

川という一つの流れがあって、様々な過程を経て海に到達するもの。そういう意味において、この川こそが「変化」であり、ストーリーと呼称するものの正体となる。


当然ながら川という「変化」は水で構成されている。もっと綿密に言えば、「水の状態」とでも言うべきか。湖という一つの水の集まりが川という過程を受けて、より大きな海というまとまりに変化する。

くどいようだが、逆に言えばこの一連の原因(湖)と結果(海)を一つの言葉で表現したものが物語、つまり、ストーリーでもある、ということだ。


そして、この「三部構成」をさらに七つの構成に分解することも可能だ。「七部構成」となるこの構成は三つの事態「発生」「解明」「収束」の内容を詳細化したものであり、それらすべての要素をはらんでいる。ここから展開されるストーリーの仕組みのあらゆる要素がこれらに凝縮されていると言ってもいい。


ここから先は具体的なストーリーの仕組みを解き明かすものになっていくので、次の「七部構成とは」にその内容を明け渡したい。