味志ユウジロウ2020/08/02 13:43
Follow

わたしは、いつも通りの朝を迎えた。

朝食の前に、愛犬・オーネストとビーチを散歩する。それが毎朝のわたしのルーチン。

ここダナンは、ベトナム中部の都市だ。ハノイ・ホーチミンに次いで、ベトナム第3の都市と言われている。

ここから世界遺産・ホイアンまでは、数年前からリゾート開発が急速に進み、有名な外資系ホテルやコンドーテル――コンドミニアムとホテルを組み合わせた物件――が建ち並んでいる。

50キロメートルにも亘るホワイトサンズ。整備された椰子の木。

アメリカの有名経済雑誌でも『世界で最も魅力的なビーチの一つ』に選ばれている。

一方で、海岸沿いには大きな国道が通り、道路を挟んでホテル群が空を割る。

しばらく歩くと、ガイドブックにも載っている有名なミーケビーチ(Bãi biển Mỹ Khê)がある。

観光客やローカルはそっちに行くから、この辺はプライベートビーチと言っても差し支えないと想う。

わたしの愛する名もなきビーチも、当然のことながら、ホワイトサンズだ。

隣のビーチから音楽が聞こえる。

今日はスローテンポな曲だから、この平和なビーチに相応ふさわしい。ダンスチューンがかかると、ちょっとうざいけど。

黒くて、もふもふしたオーネストは、まだ熱くない砂浜に四肢をとられながらも、懸命にわたしについて来る。

その姿がたまらなく愛おしいの。

わたしにとって、いつもの日常のはずだった。

平穏なビーチに打ち上げられた『人型の漂着物』を見つけるまでは。


最初は水難者……もっとはっきり言えば、水死体だと想い、ドキッとした。

でもオーネストが、近寄ってじゃれつくと、反射的に手足を動かしているのが分かった。

とりあえず、生きているってことだよね?

「Are you OK ?」

国籍不明。だから、わたしは英語で話しかけた。