Chapter 3 - 02 SIDE-L
わたしは、いつも通りの朝を迎えた。
朝食の前に、愛犬・オーネストとビーチを散歩する。それが毎朝のわたしのルーチン。
ここダナンは、ベトナム中部の都市だ。ハノイ・ホーチミンに次いで、ベトナム第3の都市と言われている。
ここから世界遺産・ホイアンまでは、数年前からリゾート開発が急速に進み、有名な外資系ホテルやコンドーテル――コンドミニアムとホテルを組み合わせた物件――が建ち並んでいる。
50キロメートルにも亘るホワイトサンズ。整備された椰子の木。
アメリカの有名経済雑誌でも『世界で最も魅力的なビーチの一つ』に選ばれている。
一方で、海岸沿いには大きな国道が通り、道路を挟んでホテル群が空を割る。
しばらく歩くと、ガイドブックにも載っている有名なミーケビーチ(Bãi biển Mỹ Khê)がある。
観光客やローカルはそっちに行くから、この辺はプライベートビーチと言っても差し支えないと想う。
わたしの愛する名もなきビーチも、当然のことながら、ホワイトサンズだ。
隣のビーチから音楽が聞こえる。
今日はスローテンポな曲だから、この平和なビーチに相応しい。ダンスチューンがかかると、ちょっとうざいけど。
黒くて、もふもふしたオーネストは、まだ熱くない砂浜に四肢をとられながらも、懸命にわたしについて来る。
その姿がたまらなく愛おしいの。
わたしにとって、いつもの日常のはずだった。
平穏なビーチに打ち上げられた『人型の漂着物』を見つけるまでは。
最初は水難者……もっとはっきり言えば、水死体だと想い、ドキッとした。
でもオーネストが、近寄ってじゃれつくと、反射的に手足を動かしているのが分かった。
とりあえず、生きているってことだよね?
「Are you OK ?」
国籍不明。だから、わたしは英語で話しかけた。