新天地……?
眼前に人影が見える。あいつだ。
もう迷っている暇はない。一か八かだ。
「――」
覚悟を決め、向き合う。そして少年はその言葉を言い放ち――。
――いったいどうしてこんなことになったのだろうか。
少年はそんなことを思い、ため息をつきながら混乱している。意外と器用な少年だ。
これと言って特徴はない。
身長は平均的。髪はもちろん黒色。学校帰りなのか髪と同じ黒色の制服を着ている。日本だったらそこまで珍しくもない服装だ。群衆に紛れ込んだら一瞬で見失ってしまうだろう。
――しかし、少年は道行く人々全員に珍奇な目で見られていた。
それも当たり前だろう。なにせ、道行く人々の中には黒髪の人間も、学校の制服を着ている人間もいない。青髪や金髪、鎧を身に着けていたり、一本剣を身につけていたり。どれもこれも、日本ではありえない光景ばかり。
「もしや、これって……!」
見世物の気分を理解し、意識的にそれを無視する。
そして少年はきらきらと目を輝かせながら言い放つ。
「異世界召喚ってやつじゃないか――ッ⁉」
珍奇の目線がさらに増え、少年は叫ばなければと後悔した。
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