ここは、夜の明けない極夜の街
アズレリイ...... 。
街が闇につつまれたとき、
人々は三種の性質変化に侵された。
ザイン(sein)
: 眠ることができない人間
インザイン(Insein)
: 目覚める事ができない人間
ダーザイン(Dasein)
: 死ぬ事ができない人間
極夜の街は、
互いの性質をめぐる争いに
満ちていった…………。
「 はぁ……はぁ、はぁ」
艶やかに光る石が敷き詰められた路地を駆け抜ける青年。
それを数人の男達が追いかける。
「二手に別れろ!!」
「袋小路に追い詰めるんだ!!!!」
青年はこの区画の地理に疎いのか、角を曲がる度に、男達に距離を詰められていく。
「追い詰めたぞ 」
「なにが鬼ごっこだ?」
「フザケやがって 殺せ 」
残念ながら、この街ではリンチはよくある光景だ……死ぬことのないダーザイン達は、その行為に狂暴性を増している。
「はぁ……はぁ…」
「……鬼ごっ……こ………」
「鬼ごっこは終わりだ 」
ガンッ
ガン
弾丸は、無防備の青年を容赦なくつらぬく。
身体を支えきれず、壁に背をつけた。
「ゴボッ」
その口許からは、血の泡と…………
笑みが溢れた。
「ぐはっ」
「……終わり……だって? 」
青年の瞳が深紅に光る。
……ギン
「わかってんのか?鬼ごっこだぜ?」
叫ぶと同時に、青年は自ら傷口を
絞り出した。
「鬼はひとりだ!! 」
「追い詰めてたのは、こっちだ!」
吹き出した血液は深紅の刄となり、
男達に襲いかかる。
バシンっ
「あっ かはっ なんだ!?」
次の瞬間、男達の半数が首から下に永遠の別れを告げることになった。
「血液が刃物のように!?」
「こいつダーザイン(Dasein)だ 」
「しかも我々より……にげ…… 」
碧く艶めく石畳に、紅い色が広がる……
「逃げるのか?」
「ひとり……いや、ふたり…… 」
青年が触れると、その血液は硬質化をはじめ新たな刃物となった。
「逃がさない…… 」
「ダーザイン(Dasein)なら
死ぬことはない……だから
やりたい放題? 」
青年が口許は冷たい笑みをうかべると、
その奥に、不自然に尖る犬歯が光る。
「残念だったな……」
「お前らが追いかけていた人間…」
「俺は…ダストブレイカー
(不死者を殺せる者)だ」
「さあ……続けようか」
「……鬼ごっこを 」
鬼は、馴れた足取りで路地を曲がった。
002へ続く