Baskadia

墜落日記

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蟻足びび2020/11/15 10:17
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10月5日(月)

今日は災厄だ。よりによって僕らの乗ってる便が墜ちるなんて、なんてついていないんだろう。

残ったのは俺らだけか。1,2,3,4......

こん中でも一人、足りねぇな。

男女それぞれ3人の、6人で来たはずだから、もう、ひとりどっか行っちまった。やっぱどっかでもう死んでんのかな......

〇〇♂っ!?___だな、いっちまたのは。

〇〇♂とは小学校の時からの付き合いで、ずぅっと話してきた約束があったんだよ。いつか一緒に海外だってな。ヨーロッパでガツンと海外旅行だって。やっと果たせると思ったのに......大学入っていい友達見つけて、バイトで稼いだお金もいい感じに貯まってきて、ついに行けるんだってあんなに喜んだのに!くっそ、なんで死んでんだよ、しょーもねえなほんとに!!情けねえなぁ、まじで......っ!

死なないで、くれよ......

ふう。すぅ、はぁ。

___あいつの分も、僕らが生き抜くしかねえ。生き残ったのにはきっと、なんか理由があるんだ。そう信じるしか無い。

神様仏様ってのも、もしかしたらいるのかもしれねえなとさえ思える。

救助も、きっと来てくれるから。それまで、頑張って生きよう。

もし僕が死んだ時、これを誰かが拾ってくれれば何があったかわかるよう、ここに記しておこうと思う。



10月6日(火)

せめて〇〇♂の遺体でも探そうということで、皆でその辺をうろうろ探し回った。

運の悪いことに、ここはあたり一帯を樹木で囲まれたふっかーい森だったっぽい。

救助が来るのも、こりゃ期待できないな。

二日目にして希望は閉ざされちまった感じか。

昼間でさえ薄暗い森は、一日の時間間隔まで奪っていく。

△△♂の持ってた大容量のポケットwi-fiのおかげで、スマホは使えるんだけど、5人分のネットを支えるんだからすぐ切れてしまうだろう。

飛行機が爆破したときに飛び散った大勢の搭乗客だったモノたちが、ちょくちょく転がってることがあった。

スナック菓子の袋をうまく開けられたなかった時、菓子はこうやって散乱するっけ。

結局〇〇♂は見つからないので、今日はここで野宿。

頼む、見つかってくれ......



10月7日(水)

僕たちが起きたときも、あたりは闇に落ちている。

陽の光さえ届かない密林に僕らはいるんだから。

二日間ものを口にしないだけで、こんなにも体は疲労をためてしまうらしい。

人間ってなんて無力なんだか。

よく思えばまだ水も飲んでねえや、これ大丈夫なんかな。

またまた歩くだけでこの日は終りを迎えた。



10月8日(木)

□□♀が離脱した。

別に死んだとかじゃないんだけど、こうやって死体を探すだけのことに大事な体力を使えるか、なんて言い出して。それも正論だよね。

生きていくために懸命な判断だ。

二日間も歩きっぱなしだ。こうしててはほんとに、僕らの体力のほうが尽きてしまう。

□□♀を残してきた僕らだったけど、明日見つからなかったら諦めようっていうことになった。

ごめんね、〇〇♂。

最期に供養すらしてやれないなんて、最低な友達だよ、僕。



10月9日(金)

今日は〇〇♂が見つかった!

案の定もう死んじまってたけど、でも嬉しかった。

一人で死なせとくのは、本当に悲しい限りだったから。

完全に固まりきった彼を見ていると、涙が止まらなかった。一緒に探し回った友も、涙を流さないものはいなかった。

こういうときに、友情ってほんと温かいんだな。もっと違うときに、楽しく友達したかったって正直思うよ。でも、もう贅沢は言えない。

今は生きることが大事なんだから。



10月10日(土)

〇〇♂は、そう言えば飲み物担当だった。

皆は、彼の運んでいたキャリーケースにあった水やジュースを、我よ我よと奪い合った。

もうすぐ一週間、水無しで生きることのできる限界は近づいてたのに加え、休まず歩いたんだから、そりゃ当然のことだろうと思う。

〇〇♂を探すために、〇〇♂を大切な友だちだと思ってるんだから。



10月11日(日)

この友情は本物?

よく思ったら人は、自分の命を犠牲にして死体を探すことってできるの?

〇〇♂の担当職......は、関係ないよね、多分。

僕らは親友なんだから。あの日あんなに楽しそうに出発したんだから。

皆ありがとう、〇〇♂を探すの手伝ってくれて。今でも本当にそう思える。

最期に会いたかったんだ、皆も。

□□♂だって、本当は会いたかったんだろうに。



10月12日(月)

今日はちょっとした事件が起こった。

✕✕♀が、△△♂の持ってたポケファイの容量を使い切った。

なんでも、✕✕♀の好きなユーチューバーのライブ配信をフルで見たらしいのだ。

約一時間半、全部。

それに対してーー♀も△△♂もめちゃ怒った。

そりゃそうだろう、遠慮して遠慮してちまちま使ってたとこを、✕✕♀に全部奪われたんだから。

僕も正直、悪いのは✕✕♀だと思った。

✕✕♀は謝っていたけど......今日は解決しなそうだ。



10月13日(火)

ずっとギクシャク。

✕✕♀と、誰も口を利かなくなった。

✕✕♀は少し笑いながら色々話しかけてみたけど、返答はない。

「ねえ?《筆者くん♂》?私達、友達よね?」

僕にもそんなふうに話しかけてきたのだけれど、ーー♀と△△♂の圧力を感じ、何も答えなかった。

何も答えられなかった。友達なのに。友達、だったのに。

大切だとずっと思ってた友達なのに。

僕は、僕の身を選んだ。

それがショックで、僕は自分を見失いそうになった。

その時の✕✕♀の顔を、鮮明に浮かべることができる。

すっごく悲しい顔をしてたのに、悲しいはずなのに、口には笑みを含めていた。

『当然だよね』

彼女の漏らした言葉は、多分僕にしか聞こえてない。



10月14日(水)

起きたら✕✕♀はいなかった。

一人でどこかに歩いてしまったらしい。

......ごめん、本当に。ごめんね。

皆___と言っても僕含めてもう三人か___、こころなしか雰囲気がぎくしゃくしている。

✕✕♀が掃けられたのも、なんか無理やりな感じあったし......

......飲みもんの分け前が減る。

もしかして、そうゆうこと?皆、友達を捨てて?自分を守ろうと......?

僕たち、友達でしょ?そんなこと、考えちゃダメだよ。

そんなこと、絶対。



10月15日(木)

あー、お腹すいた。

一日中ずっと寝転がってる日が続いている。

幸いこの季節、葉っぱが散ってくれるから布団ができる。

はぁ。

そういえば、紅葉してたんだな。

めっちゃきれい。

来たかったなぁ、もっと楽しく。

✕✕♀___



10月16日(金)

飲み物が切れた。

もうなんも飲むものが無い。

そんな中に、なんと別れた□□♀が歩いてきた。

生きてたんだね!

めちゃ嬉しかった。

生きている人間がいたことが素直に嬉しかった。



10月17日(土)

ーー♀も△△♂も、相変わらず冷たい視線を送っている。

□□♀は、食べ物はもちろんなく、飲み物は、樹木の汁や葉の落とす雫でまかなっていたそうだ。

いよいよまじで食べるもんがねえ。

皆、目が死んでる。

___生きている意味を考える前に、生きていく方法を必死に模索している。

さながら、生み出され放り出された、知能付きロボットのように。

ロボット、ねえ。

ロボットだったら、食べるものに困らないのかなぁ。



10月18日(日)

遭難してから13日がたった。

飲み物も切れ、ヒトは干からびるのを待つのみか。

皆、雑草を抜き取っては、わけのわからん色をしたその汁をすすり、また草を抜く。

もう生きるために生きているしか無かった。



10月19日(月)

きょうは、なんもする気がおきない。

だから、寝る。



10月20日(火)

△△♂と□□♀の怒気を含んだ声が聞こえる。

なんで喧嘩してるの?もうやめようよ。

ばかみたい。

あれ、ーー♀は?



10月21日(水)

ーー♀が死んでる。

お前が殺したんだろ、の言い合いをしてたんか、昨日は。

他殺のわけないじゃん。

もう限界なんだよ、しっかり休も?



10月21日(木)

みずもないけど、う|《書きかけの『飢』に/が引かれ、『う』となっている》えがいよいよやばい。

何も食べなくっても一ヶ月生きられるってきいたことあるのに。

さい初のすう日で体力だいぶつかっちゃったからか。

△△♂は、じめんによつんばいになって、草をがさがさしながらなんかしてる。



10月22日(



10月23日(土)

いけない、きのうかきわすれた。

まだみんなおきてるの?

あー、しゅりょうしてるのか。

むし|《書きかけの『虫』に/が引かれている》さんかな?かわいそう









        ここからしばらく、紅く染まっていてよく読めない。









10月31日(?)

今日はハロウィンか。

ハッピーハロウィーン!なんて言っても、誰も返事はしてくれない。

□□♀?△△♂?ねえねえ、寝ちゃってるの?

みんな、もう食べ物はいらないの?



11月1日(?)

△△♂が食事してる。

虫食べるのって、めっちゃ勇気いるよね。

どっかのテレビ番組でやってたの見たことあるけど、僕絶対無理。

雑草と昆虫のディナー......可哀想な食事......

生きてて意味あるのかな?

友達が困ってると、助けたくなっちゃう。



11月2日

たべもんがふえたー



11月4日

ちょっと歩いたら、✕✕♀ちゃんに会えた!

やっぱ大好き、めっちゃ好き。

あー、ちゃんと✕✕♀ちゃんに伝えたかったなぁ。

いまならいくらでも言えるよ、大好き!好き!



11月8日

一人の森はとっても寂しい。

あー、母さん、父さん、会いたいよー。

友達はもう飽きちゃったから。



11月15日

救助が来た。ついにこのときがきた!

僕達帰れるんだ。やっと帰れるんだよ!

□□♀、✕✕♀、△△♂、〇〇♂、ーー♀。大好きな、大切な友達。

一緒に、帰ろうね!







_______________________









「ただいまー」



「_____??っっ!!《筆者♂》!?__っ......____もう、本当に心配したのっ!もう、絶対会えないと思った!!嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい。__っ...___あなただけでも生き残ってくれて、本当に嬉しい!」



「何言ってる、の?母さん。みんなみんな、まだいるのに」



「そうなのね、良かったわ。今日はもうおやすみ、色々疲れてると思うし、辛い経験もしたと思う。おつかれさま」

「もう絶対に、私から離れちゃダメよ」





「______ボクガハナサナイヨ」





                                    《了》













《解説》



◎主人公が一番狂ってる説





10月23日までの間、主人公たちは様々な苦難を乗り越えてきました。

〇〇♂を探していたのは、友情からではなく、ただ単に飲み物が欲しかっただけ?という疑念を持った《筆者》ですが、友達想いのため、そんな仲間も信じようとするのです。



しかしその後、日記の血塗られた一週間が訪れます。

ここで浮上するのが、『人間を初めて喰らった』説。限界を感じた《筆者》は、ここで人間を食べるという境地に達してしまったのでしょう。

一度足を踏み入れた場所には、たやすく入ることができる。

一週間後の31日の日記が再びしっかりとした言語で書かれていることからも想像できます。

ちなみに、おそらく最初に手を付けたのは、すでに死体が傷み始めているであろう〇〇♂であると考えられます。



11月1日、《筆者》は、△△♂の無様に食事する姿を見てなんだか可哀想に思えてきます。

翌日の日記『たべもんがふえたー』という記述から、おそらくここで、”△△♂を殺した”のでしょう。

もちろん、食べることも忘れずに。



11月4日、《筆者》は、すでに息絶えた✕✕♀に会います。

二日間もふらふら歩いていたことになりますね。日記を書けるような意識は無かったのかもしれません。

ここで《筆者》は、大好き大好きと唱えながら、✕✕♀を喰います。

もはや、彼は人間としての理性を飛ばしてしまっているのです。



11月8日、主人公は友達の”味”に飽き、早く帰りたいと言い始めます。

父さんと母さんに会いたい、と。



11月15日、ようやく救助が来ます。友達全員の名前を上げ、『一緒に帰ろう』と言ってることから、他の友だちも《筆者》に食べられていたということがわかるでしょう。



家族の元へ帰った《筆者》は、母さんに向けて、『もう離さない』と言い放ちます。

素直な子供のセリフ、にも聞こえなくありませんが、もちろんここで《筆者》が正気に戻っているわけもありません。つまり、母さんはこの後、《筆者》に食べられてしまうことになるのでしょう。



後日談として、警察によって逮捕された後、裁判で《筆者》の罪は軽くなるか、もしくは無罪にすらなりえます。

森での経験ですっかり病んでしまった彼は、精神病患者として取り扱われるのです。



大学に入ってようやく行けた旅行の最中の事故。

友達も死に、狂乱に堕ちた彼にとっては、あまりに悲しすぎるストーリーでした。










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