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ユリの花が咲くころに

{4月}  ✳出会い✳ 「ふぁ…あ?」 4月、屋上で少年_向日葵はいつもどおり昼寝をしていた。 もう高校生になったというのに彼はまだ数回ほどしか学校に来ていなかった。 風が吹くたびに彼の金色に輝く髪をなでる。葵がそばに置いた青色の角張ったスマホが鳴る。そのアラームは下校の時間になったことを知らせる。その音と同時に屋上の扉が開き一人の少女が入ってきた。少女は迷わずフェンスにのぼり柵の向こう側へ行く。アラームで目を覚ました葵の目の前にいる真っ白な少女は葵をちらりと見た。 ――誰?これから死ぬっていうのに邪魔だなぁ。でも関係ないか。どうせ私に興味なんかない。―― 彼女はそんな事を考えていた。そしてまた赤い夕焼け空へと視線を移す。そばには靴がきれいに揃えておいてあった。少女を見た葵の耳はほのかに赤く、そして熱かった。 「……何してんの?お前。死ぬ気か?」 そう言うと、少女は驚いたように振り向いた。葵が話しかけてくるとは思わなかったようだ。そしてため息をついて言った。 「キミには関係ないでしょ。それに私が死のうと私の勝手」 その言葉を聞いた瞬間、葵は一瞬にして目を覚ました。そして、こう言った。

ユリの花が咲くころに