魔法のシロップ屋さん

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宇波2022/03/16 06:12
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「質問はまだあるかい?」

「いえ、特には」

「そっかそっか。それじゃ、装備を探してこうか! 恵美はどういうスタイルにするかもう決めているかい?」

「採取を主に。ネアは収集コレクター型って言ってました」

「収集かぁ。それなら、身軽さを生かした軽いものと、特にポーチに力入れた方がいいな。まずは見繕ってくるから恵美! ちょっとそこで待ってな!」


 そう言い残して店内を駆けまわる河野さんに、「店内は走らないでください!」とヘルメットさんの叱責が飛んでいた。


「なんか、嵐みたいな人だね」

「んね」


 思わず呟いた言葉に、陽夏は同調してくれた。

慌ただしく動き回る河野さんは、いくつかの商品を手に取った後、私の所に戻って来る。

「さてお待たせ! あたしのおすすめの組み合わせだよ! ちょっと着て見せてくれよ!」


 商品を詰めた買い物かごを私に押し付け、試着室に押し込んでくる。


「着替えたらカーテンを開けてくれ! サイズとかも見ないといけないからね」


 そう言って押し込まれた試着室の中は、嵐が過ぎ去ったかのようにしんとしていた。

ぽかん、としばらく呆けていたが、呆けていても何も始まらないとかごの中を物色する。


「あ、Tシャツと短パン……肩紐付き? うん、まあ、普通かな。あと、それと……」


 ひとつずつ確認して並べていく。

シャツやパンツだけではなく、下着まで用意されていることには驚いた。


「うわ、動きやす」


 しかもただの下着ではなく、動きやすいように補正された下着。

可動域も広く、締め付けも苦しくない。

これであればずれる心配もなく、私は値段が気になった。


「しかも全体的に軽いし。え、これ本当に防御力あるの?」


 羽のように軽い。文字通りの意味で。

この肩紐付き短パンはきっと落ちないようにの配慮だな、と思う。


 しかしここまで配慮されているのに。

私は腑に落ちない気分でかごに入っていた服を、用途の分からない短いベルト以外すべて着こみ、その上からウエストポーチを吊り下げる。


「できましたけど……」


 カーテンを恐る恐る開くと、待ってましたとばかりに河野さんが飛びついてきた。

「うんうん、あたしの見立ては間違ってなかったねぇ! 少女が少年のような恰好をする、一種の色気!!」

「その短パン、レーダーホーゼン?」

「おおっ、お目が高い! そうとも、レーダーホーゼンをモデルに、アーマーラノドンの皮を使ったものなのさ! 軽くて柔軟性があるくせして、衝撃には硬い、盗賊装備にぴったりなのさ!」


 興奮して捲し立てる河野さん。

しかし彼女は、一箇所に目を留めると不思議そうな顔をした。


「恵美、一緒に入れてあったガーターは何故つけていない?」

「ガーター……? あ、もしかしてこれですか?」


 どこに付けるのか分からない短いベルト。

河野さんはそれだ! とまたも叫び、ベルトを受け取る。


「ガーターは靴下が落ちたりずれたりするのを防止するのさ。しかもこれはダンジョン素材から作られたガーター。だからこういう風に着けておけば、この靴下は絶対に落ちない!」


 できた、と嬉しそうに立ち上がる彼女に倣い、私も屈めていた体を起こす。

全身を確認するようにくるっとターンを決め、河野さんの顔を見る。


「いい……! いいよ、実にいい……! さすがカナタの妹……!」


 彼女は鼻息荒くにやけている。

傍目に見るとただのヤバい人。

そんなテンションのまま、彼女は叫び出す。


「二―ハイソックスで隠れた脚! 僅かに覗かせるふっくら太もも……! ガーターに食い込む愛らしいはみ肉! これが! これこそが本当の絶・対・領・域ユートピア!」


「陽夏、タイツちょうだい」

「全身タイツ?」

「脚だけタイツ」

「黒でいー?」

「いいよ」

「そんな殺生な!!」


 やめてくれー! と叫びながら私に抱き着いてくる河野さん。

この人、姉の妹と分かるが早いか、距離感バグって来てないだろうか?


「分かった! ガーターとニーハイにする利点を教えよう! だから、だからタイツにするのは考え直してくれ!」


 べりっと河野さんを引きはがすと、うるっうるの涙目で懇願してきた。

ため息を吐くと、「どうぞ」と先を促した。


「まず、エロい」

「陽夏、タイツー」

「頼む、待ってくれ!!」