さとし

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そして青空は広がる。

人間は毒だ。 人間がこの地球に誕生して早30万年。我々の祖先は争いを起こしたり自然を破壊したりと、身勝手にもありとあらゆる愚行で罪を犯してきた。 かくいう我々、現代人も例外ではない。 そのせいで地球は痩せ細り、多くの生物にとって住みにくい環境となってきている。 そんな地球の片隅に位置する島国。日本。 日本では在来生物が外来生物によって今まさに侵略されていた。 だがしかし、そんな外来生物に立ち向かう男がいた。 1 梅雨。 日本列島付近に梅雨前線が停滞することにより、雨が降ってジメジメとした天気が続く。 そんな梅雨のこの季節に、貯水池にて独りで格闘している男がいた。 「…………」 しとしと降る雨は水面に波紋を作る。彼の肌を弱く打ちつけ、黒いスカジャンをべったりと濡らしていく。 草木が生い茂る梅雨のこの貯水池はなかなか風情がある。 その雰囲気を邪魔するようにバシャバシャと騒々しい音をたてる凶暴なカミツキガメ。水面には楕円形のシルエットが見えるが、水面下ではカミツキガメと彼の戦いが繰り広げられていた。 そんな暴れ回るカミツキガメだったが、彼の手によりあっという間に水中から陸に引きずり出された。

そして青空は広がる。