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山羊文学

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落ち葉

うちの施設には花見がある。といっても散歩の延長の様なもので、川べりの桜並木を歩く。日程は特に決まっておらず、桜が綺麗で職員と子供がある程度いる日。何日かやる年もある。バタバタとする時期だが、なんとなく続いてきた風習だった。 施設職員として五年、サービス管理責任者として四年、施設長となってから三年。出世したわけではない。上が抜け続けて仕方なく就いただけだった。とはいえ周囲には恵まれた。保護者や市、法整備にも振り回される中で、なんとか子供に向き合う時間を作れている。桜の花見は開設当初から、施設長が仕切る習わしだった。 今日は職員三人に子供が十人。それ程道は広くないから、一列になったり二列になったりして川べりを歩く。途中、橋を渡って反対側の川べりを歩いて施設に戻る。シートを広げるようなスペースはないから、宴会騒ぎをするような花見客はいない。子供たちを酒や煙草に近づけたくないから、調度いいコースだった。 去年、困難ケースを引き受けた。田中光希。クラスメイトを千枚通しで刺した。保護観察処分となり、親が養育を拒否した為に一時保護委託で施設にやってきた。今は中学三年生になる。事件までは欠席しながらも

落ち葉