本棚記録帳

第11話 - 小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記/原作 藤子・F・不二雄 著 辻村深月

季月 ハイネ2020/11/30 10:20
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「友達が悲しい時には自分も悲しいし、嬉しい時は一緒に喜ぶ。ただ友達っていうそれだけで、助けていい理由にだってなるんだ」(本文より)



 月にうさぎはいないと馬鹿にされたのび太が、友達を見返すために月にうさぎ王国を建設し、宇宙の戦いに巻き込まれていく冒険譚。


 これまで辻村さんの作品を読んだことがある人なら、彼女のドラえもん好きは既に知れ渡っているだろう。「凍りのくじら」では、作中のサブタイトルがドラえもんのひみつ道具の名前なのだ。そんな辻村さんが映画ドラえもんのお話を綴っている。大事件で、大きな夢が叶ったのではないかと勝手に想像してしまった。まずは、辻村さんおめでとうございますと言わせてください。

 映画を見たことがあるので、読む前からストーリーは知っていた。辻村さんの筆致と、テンポのいいドラえもんのストーリーがかちっとはまって、場面を浮かべながら夢中で読んでしまった。月を思い起こさせるハードカバーの装丁や、月が満ちていく様子を表した話の区切りの部分など、物語意外の「本」というものにもこだわりを感じてしまって、どれほど丁寧に作り上げたのか、という思いを馳せてしまった。表紙を開いた先にも仕掛けがあり、ちょっとした楽しみが待っている。こんなの、わくわくしてしまうではないか。

 のび太とドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃん。ドラえもんは友情の物語だ。普段はいじめたり、いじめられたり、馬鹿にされたり、喧嘩しても泣かされたりすることが多いけど、

いざというときにはみんなで力を合わせて、また協力して敵をやっつけたりする。

 のび太の「友達っていうだけで助けていい理由になるんだ」という言葉が、凄く真理を突いた言葉だったと思う。助けるのに理由はいらないかもしれない。だけど、友達だから助けるんだと。そこに理屈なんていらないのだ。