本棚記録帳

第4話 - 金物屋 夜見坂少年の怪しい副業/紙上ユキ

季月 ハイネ2020/11/30 10:02
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「(前略)家族たるもの、大事なことは真実の言葉で語ってください。嘘って、ずいぶんな毒です。場合によっては薬になることもなくはありませんけど、そんなの、めったにないことです。もし、家ってものが心身の健康を養うところなのだとしたら、それを共有する家族にとって何が一番大事かって、毒を盛られる心配をしないですむことなんじゃないでしょうか。(後略)」(本文より)



 金物屋とまじない屋を営む少年が出会った、まじない屋を頼りにする人々のお悩み解決奇談。


 時代はおそらく明治か大正あたり。爵位がある、古来日本を思い起こす時代だ。

 歴史を一字一句違わず正確に述べられる人は少ないだろう。現代において、当時を思わせる写真や書物といった記録が残されているだけだからだ。しかし、人には想像力があり、それらの記録から「おそらくこうだっただろう」という推測はできるようになる。本を読んだときにその情景が思い浮かぶように、記録からもまた然り、だ。

 主人公である夜見坂は金物屋を営んでいるが、本業であるそちらにはあまり客が来ない。戸を叩くのは、副業であるまじない屋を求められたときが大半だ。呪いときに憑き物落とし、まじない。手を尽くして駄目だったときに、それでも希望に縋りたくて駆けこむ寺のような、彼の副業はそんな位置づけだ。

 最後に神様頼りになるのは、古来日本からの風習だろう。実りに感謝をし、天災を鎮めて欲しいと祈願し、願い事が叶うように頼み込む。こうして考えると、日本という国は神様と切り離して考えてはいけない国なのだろうと思う。

 私が寺社より神社が好きなのは、そういった日本の風習があるからかもしれない。どうせなら高らかに手を叩いて、喜びを一緒にわかちあいたいと思うのだ。