本棚記録帳

第15話 - ロスジェネの逆襲/池井戸潤

季月 ハイネ2021/04/04 16:06
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「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」(本文より)



 企業の買収をめぐる、銀行と証券の全面対決。銀行から出向してきた半沢の奮闘劇。


 ああ、これはまずい。いや、まずいを通り越して楽しい。先にテレビドラマを見てしまったがために、読めば読むほど彼らの声で再生されてしまうではないか。半沢直樹シリーズの三作目である当作は、ドラマを機に手に取った方も多いのではないだろうか。

 ロスジェネ。ロストジェネレーション世代の略だ。バブル崩壊後の低迷期、就職氷河期ドンピシャの世代である。なぜロスジェネなのか。なぜ逆襲なのか。後半で半沢が森山に語った台詞に、その意味全てが込められている。

 正しいことを正しいと言えること。世の中と組織の常識を一致させること。己のためではなく、客の為に仕事をすること。社会の歯車はひとつだけでは稼働しないし、どこかひとつ壊れてもうまく動かない。回し続けるためどう整備していくか。修理して、あるいは新しいものと交換するか。要所要所でやってくる判断をしていくのが会社員なのだろうか。

 人は一人では生きていけない。

 知っていたはずの当たり前を、改めて教えてもらったような気がした。