今夜、私を殺してよ

第1話 - 芽生えた殺意 1

櫻井音衣2020/10/15 19:02
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今夜もあなたは私の気も知らず、無防備に寝息をたてている。

私は安心しきったその寝顔を眺めながら、大きなため息をついてベッドを降りた。

眠れない私はソファーにうずくまり、心の中で『明日こそは』と何度も呟く。

どのタイミングで、どんな方法で。

ありとあらゆる状況をシミュレーションしながら、ゆっくりと眠りの淵に堕ちていく。

こんな不毛な夜を何度重ねただろう。

私は今日もまた、あなたを殺しそびれてしまった。



夜明け前。

明け方の冷たい空気にさらされた肌がブルリと震えて目が覚めた。

窓の外はまだ暗い。

あなたは常夜灯に照らされたベッドの上で、温かそうに布団にくるまってぐっすりと眠っている。

冷えた体をさすりながら常夜灯を消して布団に潜り込むと、あなたは眠ったまま腕を伸ばして私を抱きしめた。

あなたのぬくもりが私の体を少しずつ温めていく。

それと引き換えにあなたの体は冷えていく。

まるで私があなたの体から体温を吸い取っているみたいだ。

あなたは眠っているはずなのに、私の体の冷たさに顔をしかめた。

このまま私の体で包み込んで、あなたの体温をすべて奪って殺すことができればいいのに。


あなたが眠っているうちなら簡単に殺せるのはわかっている。

だけど私がそれをしないのは、あなたが苦痛に顔を歪めて許しを乞う姿が見たいから。

私の愛とあなたの罪の深さを思い知り、悔やんで欲しいから。

そして最期に私に対してどんな言葉を残すのかを知りたいから。

だから私は今日こそあなたを殺そうと心に決めて、冷えきった唇で眠るあなたに口付ける。

あなたが最期の時くらいは嘘つきなその唇で『愛してる』と囁いてくれるように。