第1話 - 芽生えた殺意 1
今夜もあなたは私の気も知らず、無防備に寝息をたてている。
私は安心しきったその寝顔を眺めながら、大きなため息をついてベッドを降りた。
眠れない私はソファーにうずくまり、心の中で『明日こそは』と何度も呟く。
どのタイミングで、どんな方法で。
ありとあらゆる状況をシミュレーションしながら、ゆっくりと眠りの淵に堕ちていく。
こんな不毛な夜を何度重ねただろう。
私は今日もまた、あなたを殺しそびれてしまった。
夜明け前。
明け方の冷たい空気にさらされた肌がブルリと震えて目が覚めた。
窓の外はまだ暗い。
あなたは常夜灯に照らされたベッドの上で、温かそうに布団にくるまってぐっすりと眠っている。
冷えた体をさすりながら常夜灯を消して布団に潜り込むと、あなたは眠ったまま腕を伸ばして私を抱きしめた。
あなたのぬくもりが私の体を少しずつ温めていく。
それと引き換えにあなたの体は冷えていく。
まるで私があなたの体から体温を吸い取っているみたいだ。
あなたは眠っているはずなのに、私の体の冷たさに顔をしかめた。
このまま私の体で包み込んで、あなたの体温をすべて奪って殺すことができればいいのに。
あなたが眠っているうちなら簡単に殺せるのはわかっている。
だけど私がそれをしないのは、あなたが苦痛に顔を歪めて許しを乞う姿が見たいから。
私の愛とあなたの罪の深さを思い知り、悔やんで欲しいから。
そして最期に私に対してどんな言葉を残すのかを知りたいから。
だから私は今日こそあなたを殺そうと心に決めて、冷えきった唇で眠るあなたに口付ける。
あなたが最期の時くらいは嘘つきなその唇で『愛してる』と囁いてくれるように。