第43話 - 「行こう!」
サルトゥスの森へ向かう途中、メルたちは、ルーチェという小さな町へ立ち寄った。
そこで、不足している道具類や回復薬などを手に入れた。
今まで、フロールの薬草の知識に助けられてきたことを、みんなひしひしと感じていた。
「アウラ、体のほうは大丈夫?」
店の中で商品を手に取りながら、メルが尋ねる。
「メル……ベスタとの戦いのあとからずっと、初めて会ったときみたいに、アタシに体力を分けてくれているでしょ?」
「あはは、やっぱりばれてるか。今もちょっとずつ、ね。て、点滴みたいでしょ! 僕は一発ガツンと蹴られただけ。でもアウラは、何度もひどくやられていたから……」
「ありがとう、メル。あんなにやられたのに、おかげで信じられないほど回復が早いわ」
「あのとき、アウラが死ぬんじゃないかって、怖くなった……ナイフも『あいつは別格だ』って言ってたし」
「確かに、今まで戦ってきた敵とは全然違った。でも、絶対にチャンスはあるわ」
「そうだね。今までだって……」
そう言ってメルは、フロールの存在感の大きさに気付かされる。
セルペンス、ムース、ティブロン――どの戦いでも、フロールのアイディアがなければ勝てなかった。
フロールは、僕にも、仲間たちにとっても、かけがえのない大切な存在だ。
メルは、フロールの笑顔を思い浮かべた。
「フロールを、必ず助け出しましょう」
「う、うん……」
アウラに心の中を見られたようで、少し恥ずかしかった。
それを隠すように、それに気付かれないように、メルは平静を装って、適当に掴んだ商品を会計へと運んだ。
メルとアウラは店を出て、町の入り口でみんなと合流した。
それぞれ必要なものを買ったり、身に着けたりしている。
絶対にフロールを助けて、ベスタを倒す。
これが最後の戦いとなるはずだ。だから、後悔はしたくない。
「行こう!」
互いに顔を見合わせ、誰からともなく言い出した言葉が、みんな一緒だった。
メル、アウラ、ヴィオ、フムス、バズ、ストラール。
全員が笑顔になった。
朝の敗北から立ち直り、そしてみんなは前を向いて歩き出す。
勝利を、信じて。