
ある日の「京大医学部医学科」受験生のモモちゃんとの会話
「モモちゃんはどうして研究医になりたいの」
「だって、臨床医だと一生に何人の患者を診れるのかな?」
「え?」
「研究医になって画期的な治療法を発見したら何億人と救えるじゃん」
「なるほど、モモちゃんらしい理屈だね」
「それに、ひとつ一つの病気の治療なんて面倒くさいよね」
「なに、何を考えているの?」
「要するに人を不老不死に出来たらいいんでしょう?」
「えーっ?そんなこと考えているの?」
「そう」
「不老不死の生物ならいるよね?」
「うっそ!生き物は必ず死ぬでしょう!」
「いや、ベニクラゲは不老不死らしい」
「そうなんですか?」
「老化が進むと、ある時に全ての細胞が初期化されて赤ちゃん状態になるって」
「でも、記憶は残るのかな?」
「え?」
「記憶が消滅したら別の生き物ってことで自分じゃないじゃん」
「そうだね」
「不老不死のクラゲ」として知られるベニクラゲに魅せられて40年以上になる。久保田信さん(69)は京都大学准教授を2018年に退官後、和歌山県内で「ベニクラゲ再生生物学体験研究所」を開き、所長を務める。そのメカニズムを解明しようと没頭する毎日だ。
「私も女だから不老不死は諦めたとして老化現象は避けたいなぁ。シワシワになりたくない!」
「老化しない生物はいるみたいだよ」
「本当に?」
「うん、ハダカデバネズミというのは不老不死ではないけど30年くらい老化せず生きるみたい」
「ネズミが?ドブネズミって2年くらいの寿命だよね」
「そうらしいね」
「30年って、15倍も生きるの?人間は70歳くらいで死ぬとしたら、15倍って1000歳を超えるジャン!スゴイ」
バッフェンスタインら研究チームは、ハダカデバネズミの死亡率は、年齢と共に上昇はせず、繁殖可能な年齢に至るまでの期間の25倍の時間が過ぎても上がらなかったことを発見した。実際、ハダカデバネズミには老化の明らかな兆候がまったく見られないそうだ。
「モモちゃんは老けたくないのならサイボーグって手もあるよ」
「機械で代用するの?」
「うん」
「でも、自分がロボットになるみたいで嫌だなぁ」
「じゃ、移植か?」
「そう、クローンで身体を培養しておいて自分に移植する。それなら拒否反応もなさそう」
「じゃ、その培養したクローン人間には人権がないって?」
「うーん」
「倫理上許されないかもね」
「アンドロイドを作って自分の記憶を全部移してしまえば?」
「じゃ、目の前に自分と同じ記憶を持ったアンドロイドがいたら自分は死ねる?」
「なんか、ちがう・・・」
「じゃ、簡単に死なない丈夫な身体があればいいかな」
「それなら、クマムシか」
「あ、それ知ってる。最強の生き物でしょ!」
「うん」
乾眠中のクマムシは、乾燥だけでなく、極度の高温・低温・圧力・放射線などによる環境ストレスにも強い耐性を示し、宇宙の真空状態でも生きていられるため、「地上最強生物」と呼ばれている。 なかでも乾燥耐性が強いものに、ヨコヅナクマムシと呼ばれる陸生のクマムシがいる。
「でも、クマムシの寿命は数十日だよ」
「なんだ、駄目じゃん」
「でも、30年半ものあいだ乾眠状態だったクマムシを、よみがえらせて産卵させることに成功したよ。このクマムシは、1983年11月に南極の昭和基地近くで採取され、30年半のあいだ零下20度で冷凍保存していたコケから取り出されたそうだ」
「その30年間、クマムシは生きていたのか死んでいたのか?」
「呼吸も体循環もなかったそうだから、普通の定義では死んでいたような」
「では、死体が生き返ったって?」
「うん。物体と生物の境界線は私たちがおもっているほど明確ではないみたい」
「おもしろいなぁ。ちむどんどん」
「はぁ?」
「ワクワクするってこと。頑張って京大に合格して研究したい!!」
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