荻野亜莉紗2022/02/27 01:26
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「……えっ ? う、後ろ ?」

 とても嫌な予感を感じながらも、飛華流はそっと振り返った。

 

 すると、飛華流の目の前に、さっきの少女が立って居た。

 (い、いつの間にっ ?)

 半泣き状態の飛華流の顔を、少女はじっと覗き込む。

 (何だよこの子……僕をガン見してくるんだけど)

 少女に恐怖を感じ、ビクッとする飛華流から彼女は全く目を離さない。

 普通ではあり得ない出来事が起き、上野家は大混乱だ。全員、間抜けに口をあんぐりさせている。

 目の前の少女に怯え、飛華流は泣きながらママに飛びついた。

「うわーーーー。ママー !」

 言葉を失ったまま、守莉は飛華流の背を優しくさする。

 少女に驚きつつも平静を装い、直志は二人にこう言った。

「うおっ……二人共、落ち着いて。ほら、小さな女の子だよ」

 (普通の……女の子 ?)

 直志の言葉に、二人はもう一度少女に目をやる。

 艶のある桜色の長い髪に、透き通った白い肌。お人形の様に、整った顔立ちをしている。

 アニメの世界から出てきた様な、どこか異質な雰囲気を醸し出す、容姿端麗な美少女……

 いや、どこが普通の女の子だよっ ! 

 そう、二人は心で突っ込んだ。

 

 突然、少女は歩き出し、飛華流へ接近する。

「えっ ?」

 自分と少女の距離がどんどん縮まっていく事に、飛華流は困惑した。そんな彼を、何故か少女は無表情でじーっと見つめる。

 その同年代くらいの少女に、飛華流は見惚れていた。

 (なんだか、前にもこの子と会った事がある様な、そんな気がする)

 懐かしさを感じるが、飛華流はこの少女の事を全く知らなかった。それなのにそんな妙な感覚がある事を、彼自身も不思議に思った。

 いや、でも……この顔、何処かで見た事が……と、何かを思い出そうとしていた飛華流。彼は、「あっ、そうかっ !」と、納得のいく答えを見つける。

 飛華流は、趣味で漫画を描いている。そこに登場する姫のキャラクターに、この少女はよく似ていた。だから、彼は少女に懐かしさを感じたのだろう。

 まじまじと少女を眺め、直志と守莉は顔を見合わせる。そして、大きな目を見開き、煩い顔を更に強調させた直志に、守莉は声を潜めて言う。

「ねえ、また ? ……何で ?」

「こらっ……もういいって」

 不愉快そうな顔をし、直志は守莉を叱る。

 すると、守莉は「あっ……ごめん」と口を押さえた。

 そんな不自然な二人に、飛華流は尋ねる。

「えっ ? またって何 ? こんな事、前にもあったの ?」

「うーんとね……なんて言えばいいのかな。この女の子と……」

 困った様子で何かを言いかける守莉を、直志が遮る。

「もう、この話はやめやー。……とりあえず、今はこの子をどうにかしんといかんよ」