いつからだろう?僕はいつも見る奇妙な夢があった。
白い雪景色の中、白いコートを着た女の子が仰向けで寝ている。そのコートからは血が出てきていて雪を真っ赤に染めていく……。その傍らのは黒いコートを着た男が立っていて、手には多分女の子を指しただろうナイフを持っている。白と赤と黒のコントラストが不謹慎かもしれないがとても綺麗で、そこで目が覚める。
悪夢のはずなのに、いつも見ているからだろうか? 僕にはいい夢の様に思えていた。
その夢を見出してからいく年すぎただろうか? 大学生になった僕はある少女に一目惚れをした、黒いロングヘアーが似合う白い肌の少女だ。彼女はまだ高校生で僕が家庭教師に行って知りあったんだ。少女はすぐ懐いてくれ、
「先生、受かったら何かご褒美頂戴」
と無邪気な顔で僕におねだりをしてきた。ドキドキしながら、
「何がいいんだい?」
すると小さい声で、
「北海道に行ってみたいな。内緒のお泊まりで」
と嬉しい事を言ってくれた。僕は興奮を抑えながら、
「わかったよ、頑張って大学受かろうね」
「うん!」
少女は嬉しそうにうなづいた。
それから半年後、少女は見事大学に合格した。少女は嬉しそうに、
「先生!約束忘れてないよね」
僕が、
「男の人と一緒なのに大丈夫かい?」
と聞くと、少女はペロッと舌を出しながら
「お友達と行くってもう話してあるの、だからいいでしょう?」
今の子は随分自由だなぁと思いつつ、
「わかったよ、じゃぁ行こうか」
「良かったー、行ってみたい場所があるんだ!」
僕が首を傾げながら
「ふーん、何処なんだい?」
と聞いても
「着いてからのお楽しみ」
最後まで教えてくれなかった
二人だけの旅行当日、少女は黒いダッフルコートに白いパンツでやってきた。案外荷物が少なめで、
「向こうに行っても帰るから」
と言う少女の言葉で
(それもそうか……)
と納得して、北海道行きの飛行機に乗った。少女ははしゃいでいて、
「先生、嬉しい!」
と、何度も繰り返しながら外の風景を楽しんでいた。
北海道について、
「行きたかった所は何処だい?」
と改めて聞くと、
「大丈夫!場所はわかっているから」
タクシーを止めて乗り込んでしまった。何かのサプライズか? と思いながらも少女と一緒に乗る。少女は、
「ここから○○町までお願いします」
まるできた事がある様にタクシーの運転手に頼んでいる。ふと、
「北海道に今まで旅行にきた事があるのかい?」
少女は、
「初めてですよー、あらかじめ場所は調べておいたんです」
「用意がいいね」
苦笑しながら言うと、
「先生もきっと気にいってくれます」
自信たっぷりに言われてしまった。
着いた場所は雪原だった。何か思い出しそうになった僕に少女は体当たりしてきた。見ると今日きたばかりの白いコートが赤に染まっていく。
「何で……?」
仰向けに倒れながら言う僕の耳にしゃがんで少女はささやいた。
「今度は私の番よ、又、来世でね」
薄れゆく意識の中で、いつも見る夢を思い出していた……そしてこの夢は永遠に覚めないループだと思いながら意識を手放した……。
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