第5話 - 愚者、不幸な青年と会う。
「んー、今日はどこに行こうかなぁ...。」
ここは、ソード領の辺り。近くに町、村などはなさそうだったため野宿をし、朝を迎えたため、テントと焚き火を処理しつつそんな事を呟いていた。すると森の奥の方からかすかに人の声が聞こえてきた。
「...~い...た...けて...ぇ~」
「?なんか...聞こえた?」
「だれか~...いたら...じしてくれぇ~~」
若干ではあるが、やはり聞こえてくる。助けに行こうかな、というとまた近くで声が聞こえた。
「あ~!だれか来てくれたね!ありがとう!」
しかし、いくら周りを見渡してもいない。罠か...?と考えた瞬間、
「あの~...上見てくださいよぉ~...。助けてぇ...。」
頭の真上に居たのは、ブロンズ髪の青年だった。足がつたに絡まり、宙ぶらりんになっている。
「やれやれ...。僕が居なきゃどうするつもりだったんだい...?」
仕方なく、ツタがかかっている木を前蹴りで倒すと青年は降りられたらしい。
「じゃあ、僕はこの辺で。次は絡まるなよ~。」
そういって立ち去ろうとした。が、
「あれれ...?よく見たら"愚者"じゃないか?なぜここに居るんだい?」
不意に聞かれた。焦った愚者は...
「...なぜ"そのこと"を...まぁいいや、力づくで聞いてみるよ...。」
「わわ、ちょっとまt」
愚者と話をしようとしたが、いきなりグーパンチが飛んできた。強烈な突風が吹くと、周りの落ち葉が拳の方向に螺旋を描いて突き抜けた。
「うわっちょ!待ってってば!僕も"大アルカナ"だってば!忘れちゃったの?"吊るされた男"!」
「...!!」
「思い出してくれた?オーディール・アルベルトだよ。...アルって呼んで貰えるといいかな?」
必死に思い出してもらうオーディール...しかし、愚者の記憶能力は少し弱かったようで...
「んー...。やっぱり、覚えてないや。よろしくなーアル。」
自分の団体のメンバーくらい覚えてくれ...!たったの21人だろ...!!と心の底から呆れたアルであった。