第3話 - 出会いの良し悪し
街から追い出されて僕は、東(だと思う)に向かった。
異世界がから、太陽が南に高く上がっているとは限らないからね。
そうして歩くこと2時間、ようやく初の魔物に出会う。
その魔物は…、鋭い爪や牙に、立派な翼。長い尻尾を持つ、地球上にいないとされる、ラノベとかでも最強格の生き物でとして有名な。
「何で街の近くなのにドラゴンがいるんだよ!!」
はい、ドラゴンでございます。
「ガァァァァァァァ!!!!」
赤いドラゴンが、辺りを轟かせる咆哮をあげる。あまりの音量に、思わず耳を塞ぐ。
この赤ドラゴンは、ダチョウの様な生き物を抱えているため、狩りの途中だったと思う。
ドラゴンが飛来したのとは反対側に向かって逃げる。
「僕の運、どうなってるのぉぉぉ!!!」
思わず叫ばずにはいられない程不運だったと感じる。不運もいいところだ。てかもう死んじゃう?
そんな事を考えていると、ドラゴンにもう追いつかれていた。終わった。
こんな時だが、走馬灯みたいに、クラスメイトとの思い出が…あ、特に無かった。
「思い出ぐらいあってもいいじゃーんかー!!」
「ガァァァァァァァ!!!」
耳を塞ぎながら後ろを振り向く。
至近距離でドラゴンと目があった。捕食者の目だ。
僕も、ここで終わるのか。あの兵士さんに情けをもらったのに、恩も返せないなんて、申し訳ない。
目を閉じる。
迫る死の瞬間に、思わず冷や汗をかいていた。
そしてその瞬間を待つ。
「『桜花一閃』」
凛とした声が響く。その直後。
「グガァァァァァァァ!!!!!」
ドラゴンが苦悶の声をあげる。
そして、ズズーン!と音を立ててドラゴンは倒れた。
「僕、助かった?」
「なんで赤龍がここに…それより、君、大丈夫でしたか?」
声のかかった方を振り向くとそこには、白く長い髪を靡かせて、剣を仕舞っている女性がいた。
「え……あ、ありがとうございます!」
ガバッと勢いをつけて頭を下げた。最初に見惚れてたなんて言えない。
「いえいえ、それ程でも。それよりも、早く移動しましょう。見たところ、装備も弱そうなので、この辺りは危ないです。この近くのカイトの街に行きましょう。」
「分かりました。」
そうして美少女と歩き出す。
「まず自己紹介ですね。私はカナデ、と言います。貴方の名前は?」
「えっと僕は、細川宗っていいます。」
「シュウ、ですか。私のことはカナデって呼んでくれて構わないから。」
「僕も宗で大丈夫です。」
「シュウさんは、何処から来たのですか?
そうだ、まだ高校の制服のままなんだった。あまり日本について明かさない方がいいかな。
明かすか明かさまいか迷っていたけど、ここはテンプレの出番だ!
「ずっと遠くの東の小さな島国から来まんです」
「東の方から来たの?そう…。突然なんだけど、君、私の弟子にならない?」
…え?弟子?突然過ぎやしないか?
「弟子…ですか?」
僕が状況を呑み込めずにいると、
「そう。失礼だけれど、あなたの能力って低い方よね。それは、この世界で生きていくには少し厳しいの。だから。」
そう、僕は弱い。日本では典型的なインドア派だったので
強くなろうとしてもコミュ力が低く、誰かに教えを請えるようでは無かった。まさに千載一遇のチャンスだ。
コミュ力低いのに女性と話せてる?それが命の恩人だからですけど。
「でも、条件がいくつかあります。」
「条件?」
「はい、一つ、私を師匠と呼ぶ事。二つ、私の指示に従うこと。おーけー?」
「はい!分かりました、師匠!」
「うんうん。私の口調も崩させて貰うよ。師匠だしね。じゃあ、早速街へ行こう!色々はそれからだよ!」
あれ?この人以外とフランクな人なのでは?でも…
「はい、師匠!」
僕は美少女ことカナデ師匠と、カイトの街へ走り出した。
…何故会ったばかり、初対面の男を弟子にとったのか。
見ず知らずの人なのに、どうして。
本当の理由が知りたい、と思ったが、僕はそれ以上考えないことにした。