本棚記録帳

第7話 - さようなら、君の贖罪/半田岬

季月 ハイネ2021/03/18 16:28
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 何かと比べて落ち込みながら。

 誰かの意見に振り回されながら。

 いわれのない批判を浴びながら。

 そしてときに励まされながら、最後には自分で考えて、答えを出す。そうやって僕らは、大勢のひとのなかで生きる自分を見つけていく。(本文より)



 ”特別”と”過ち”を抱えた二人の高校生の再生物語。


『朝食を済ませて、登校の準備をしようと自室に戻ると、目の前にアザラシがいた。』

 あらすじと冒頭の一文が気になってしまい、ついつい手に取ってしまった一冊。アザラシ? なにゆえアザラシ? とのっけから疑問符全開である。

 ある日、佐久は、自分自身を含めたものや人を瞬間移動できる卯月と出会う。彼女が移動させてしまった物たちの返却を手伝い始める。実は佐久にも直観記憶という、特別な能力があり、という物語だ。

 人を傷つけてしまい、取り返しのつかない失敗をしてしまう。自分は”特別”であると吹聴して、自慢をしてしまう。きっと、誰にだって似たような経験はあるだろう。

 普通の人とは違う能力を持つ。そんな卯月と佐久の弱点は、一人きりになってしまうことだった。彼らに限った話ではない。それは、誰だって覚えのある寂しさだ。誰からも忘れられ、無視され、認知されない世界の中で生きていくとしたなら、きっとそう長くは保たないだろう。一人きりで抱え込んでしまうことでも、溜めすぎないようにどこかで吐き出せば心が軽くなる。”特別”だと決め込んで一人きりの世界に閉じこもってしまうよりは、そこから顔を覗かせて別の世界を見てみたい。そして自分の足で探しにいきたい。そう思うのだ。