第2話 - 2話
「ただいま......って言っても誰もいないか」
俺は神代高校に通いやすいようにマンションに引っ越してきた、ここなら高校に行くのに徒歩十分くらいだ。
両親が神代高校に行くならこのマンションを買ってあげるって言うから中学は必死に勉強した、神代高校は結構有名な高校だ、最初は親も俺みたいな馬鹿がいけるような高校じゃなかったから冗談で言ったみたいだが、俺はやりきった。
それに一人暮らしというものをしたかったのだ。
両親は良く海外に出張に行っている、仕事の内容は教えてくれないが怪しいことではないと信じたい。
でもこのマンションを買ってくれるくらい稼げる仕事......考えないでおこう。
「おかえり!」
こうやって『ただいま』って言ったら『おかえり』って返してくれる可愛い彼女がいたら......いたら?
「おかえりお兄ちゃん」
「おにい.....ちゃんって.....柚葉!?どうしてここに」
俺の妹、八神柚葉。中学三年生。
少し茶髪っぽいショートな髪型。
兄の俺が言うのもなんだが結構可愛い。
なのに何故か彼氏ができたことは今までで一度もない、今まで数十人に告白されたらしいが全部断っているらしい、なんと羨ましい......
何故妹がこんな可愛くてモテモテなのに兄の俺は冴えないぼっちなんだよ......神様、なんで俺をもっとモテモテのイケメンにしてくれなかったのですか。
「なんかお母さん達がまた海外に出張に行くからお兄ちゃんの所に泊まりなさいって」
「泊まるって、学校はどうするんだよ」
「大丈夫、電車使えばすぐだし」
「通えるなら別に良いけど......てかなんでお前居るの?」
「さっきも言ったじゃん」
「違う違う、こんな時間になんで居るんだよ、学校は?」
「学校は明日からだよ」
なんと羨ましい。
そう思ったが俺も四時間くらい行っただけだしな。
「てか柚葉、どうやって入ってきたんだよ、俺ちゃんと鍵閉めてったぞ?」
「お母さんから合鍵貰った」
「おう......」
てか合鍵二つ作ってたのか、俺も一つ合鍵持ってる。
「柚葉、昼食は?」
「まだ食べてないよ、だって冷蔵庫に何も入ってないんだもん」
すっかり忘れてた買い物に行かないと何も無かったんだった、てか勝手に冷蔵庫開けたのかよ、いや別に良いんだけどよ......
「じゃあ買い物行くか、柚葉も行くか?」
「うん、行く」
そう言うと俺は制服のまま柚葉と近くのスーパーへと向かった。
引っ越してから二週間の間で四回利用したが、品揃えが良く意外とお気に入りになりつつある。
「柚葉、昼食は何が良い?」
「お兄ちゃんが作ってくれるならなんでも良いよ」
なんでも良いが一番困る、しかも昼食だからなお難しい。
「じゃあパスタで良いか?」
「うん、良いよ。柚葉カルボナーラね」
「はいはい」
夕食は家にカレールーがあるのを思い出したため、カレーに決まった。
「柚葉、じゃがいも取って」
「分かった。お兄ちゃんと二人で買い物なんて初めてだね」
「そうだな」
支払いを終え、帰り道、ソメイヨシノが散り初めているのを見つめながら柚葉と並んで家へと帰った。
ソメイヨシノは満開から三日程で散る、三日坊主かよ......
それでも数本あるソメイヨシノのうち、二本は8分咲き、満開だった。
そんなに冷たくない、少し暖かい風が吹き、桜の花びらが待った。
まるでアニメのワンシーンの様だった。
エレベーターに乗り、4階のボタンを押し、自宅へと戻った。
「お兄ちゃん、学校で友達できた?」
「......黙秘権を使わせてもらう」
「はあ......お兄ちゃん。最初が大事なんだよ、しっかりしてよね、高校生になったらお兄ちゃんも彼女くらいね」
「できるわけないだろ」
悲しいことに俺は最初が大事なのを知っているのに失敗した。
完全にコミュ症だと思われただろうな。
「なら柚葉がお兄ちゃんの彼女になってあげようか?」
「あははは、冗談はよせ」
「冗談じゃないもん......」
「なんか言った?」
柚葉が下を向き何か言っていたが、パスタを食べるのに夢中でなんて言ってたか分からなかった、声も小さかったし。
「何でもないよ、カルボナーラ美味しいね、お兄ちゃん」
もし柚葉が妹じゃなかったら惚れていただろう笑顔で美味しそうにカルボナーラを食べる柚葉。
「そんなに美味しいか?」
「うん!だってお兄ちゃんが作ってくれたんだもん」
「何?その初めてできた彼女の初めての手料理を食べた彼氏の感想みたいな理由は」
「本当に美味しいよ」
「逆に不味いって言ったら一生作らないかもな」
当然だ、突然何も聞かされないで柚葉を預かってくれと言われ飯を出せば不味いと言われたら誰でもイラってくるだろう。
柚葉は箸を置き、手を合わせた。
「ご馳走様でした」
「てか柚葉、どこで寝る?空いてる場所なら一部屋あるんだけど、そこでいい?」
「うん、どこでもいいよ。お兄ちゃんと添い寝でも良いよ」
「残念だが俺一人寝るのが限界だ。敷布団で良いよな?」
「うん」
とりあえずリビングに置いてある柚葉の荷物、多分服などが入ってる大きなカバンやバッグを空き部屋に運んだ。
空き部屋は俺の寝室の前の部屋だ。
2
そろそろ日が西に傾いてきた時間、俺は夕食を作っていた。
一方その頃、柚葉は風呂に入りに行っていた。
兄じゃなかったら柚葉の入浴シーンでも想像しているのだろうか。それくらい可愛いのだ。
クソ、なんて羨ましい。
なのに彼氏を作らないとか、イラッとくるな。
「お兄ちゃん!カレーできた?」
「ああ、ちょうど......ちょ、ちょっと柚葉、そんな姿で出てくるな」
『そんな姿』と言うと裸をイメージしてしまうが、下着は着ている。いや、下着しか着ていないのだ。
「妹の下着姿に興奮しちゃうんだ」
そう言いながら近づいてきて上目遣いで一言。
「お兄ちゃんの変態」
「興奮してないし変態じゃない」
正直に言うと柚葉の上目遣い、結構可愛い。
「風呂上がりにこんな姿してると風邪ひくだろ、まだちょっと寒いし」
「分かったよ、ちゃんと着るよ」
「当たり前だ」
こんな姿で部屋に居られちゃ困る。
新学期早々風邪とか洒落にならないしな。