第9話 - ××たい。8
廃ビルは、三階建てだった。壁がところどころひび割れている。窓も割れているところがある。それに、地面にビルの周りの地面に、瓦礫が散らばっている。
「弱かったな」
「ああ。本当に弱かった」
ビルの真下にいた少年達が、笑いながらそんなことを言っていた。青い髪を肩まで伸ばした男と、茶パツの外ハネした髪の男だ。彼らの服は、ところどころ血がついていた。喧嘩でもしたのだろうか。
……人いるし場所変えるか?
でも、また探すのもめんどくさいな。
……知り合いじゃないんだし、別にいいか。
俺はビルの中に入った。
中はほこりくさくて、そこら中にゴミがあった。
階段を三階まで上がり、屋上のドアを開けて中に入る。
飛び降り防止の柵を飛び越え、遥か真下にある地面を見た。瓦礫だらけで足場が悪い。平らなところなんてほとんどない。三階建てだとちゃんと死ねるのか不安だったけど、これならたぶん問題ないだろう。
あいつら、必要なかったな。
……早く死のう。俺なんていらないんだから。
俺は屋上から飛び降りた。
「んっ」
窓から射す陽の光に目がくらんだ。
ここはどこだ……?
俺はちゃんと死ねたのだろうか。
目を開けて辺りを見回す。
俺は白いベッドの上に病衣を着て寝っ転がっていた。腕には点滴がされている。足は動かない。
ちょっと動かそうとするだけで、猛烈な痛みに襲われた。どうやら、両足を複雑骨折しているようだ。
……折れてるのか。
痛みがあるなら、ここは天国じゃない。
……病院か?
俺は死ねなかったのか?
「すーすー」
真横から寝息が聞こえた。
ベッドの横に置かれた丸椅子に、青年が座っていた。