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――悪魔だ。非情にもほどがある。最低だ、この二人。この光景を笑いながら見てる取り巻きの奴らも。

「じゃあ履かせちゃいますかー?」

 草加の声に頷き、蘭は俺からズボンを完全に脱がせた。

 スカートに俺の足を片足ずづ入れて、草加は笑う。

「やめろっ!!」

 掠れた弱々しい声が漏れた。

「黙れよ。でないと、ズボン捨てるぞ」

 完全に脅しだった。

「じゃ、いきまーす!」

 スカートのチャックを上まで上げて、草加は俺の背中を叩いた。

「お前、マジで女子じゃん!」

 本当に狂っている。

「うわっ!?」

 俺は草加の手を振り払い、逃げようとした。だが、草加に足をかけられ、盛大に転んだ。

「おい、誰が逃げていいって言ったんだよ。まだ上が終わってないだろうが。黙って従えよ。そした

らその分佐藤も早く制服が着れんだから。人助けだと思って頑張れよ」

 何もかも狂っている。

 つまり草加は、俺と佐藤の服を取り換えようとしているのだ。

 いじめにしたって限度がある。

「……あんたが、履け」

 掠れた声で言う。

「は?」

 俺は草加の足を掴んだ。両手で草加の足を引っ張る。机の上に座っていた草加は、床に尻餅をつく。

「痛っ!」

 草加は苦痛に顔をゆがめる。

「草加! 大丈夫か。立てるか?」

 蘭は片手を差し出し、草加を立ち上がらせる。その隙を見て俺は立ち上がり、廊下に飛び出した。

 一つ下の階に降りて、辺りを見回す。五年二組の教室の向かい側に、空き教室があった。俺は中に人がいないのを窓を見て確認してから、そこに入った。

「はぁっ、はぁっ……」

 床に座って、息を整えながらうち履きと靴下を脱いだ。