第2話 - 思った以上に不思議だった
「まず、軽く自己紹介でもしようか」
俺がそう言うと、女子生徒は何も言わずに俺がさっきまで本を読んでいた席に座った。
そのままこちらをちらっと見たので、一旦座ってからなのかなと思い、俺も女子生徒の向かい側に座った。
「それじゃあ、初めまして。俺の名前は赤坂雪斗。二年生だ」
「……白崎芽衣。今日入学しました。よろしくお願いします」
「白崎さんって呼ばさてもらおうか、俺のことは好きに呼んでくれていいから」
「分かりました。ユキ先輩」
「ん!?」
ユキ先輩!?
そんな初対面でグイグイ距離詰めてくるのか!?
なんか何考えてるかも分からないし、距離の詰め方訳わかんないし、なんなんだこの子。
「……だめ、でしたか?」
「いや! 全然いいけどな? おう。問題ない」
「よかったです」
ふわっと笑う白崎さん。
会ってから今まで眠そうな顔しか見てなかったから、こんな顔もできるんだな、とついついじっと見つめてしまった。
白崎さんはそんな俺の視線に気づいて、顔を背けてしまった。
「あんまり見つめられると……濡れます……」
「へぁっ!?」
あまりに唐突な下ネタに、脳が反応しきれなかった。
まさかね? 美少女と言って差し支えない白崎さんから『濡れる』なんて単語が飛び出してくるわけが——
「無視ですか……? 放置ぷれいとはマニアックですね……」
「ちょっと待て、聞き間違いだと思ってスルーしてたのに、なんでそうも下の方にもってこうとしてんの!?」
「……男性とは下ネタを言っておけば仲良くなれるって書いてあったのに」
小さく呟いた声だったが、静かな教室内だ。さすがに聞こえる。
誰かに変な知識を植え付けられた結果、初対面からこんなに飛ばしていく感じになってしまったんだろう。
優しくフォローしてあげるのも、先輩としての務めか。
「間違った情報教えられて、ひどいな。書いてあったった言ってたけど一体何読んだんだ?」
これぞ俺のテクニック。
自爆した白崎さんを擁護しつつ、新たな話の種を作り出す。
俺が長年小説を読み漁ることで身につけた高等テクニックよ。絶技。神業。
「……未来の自分頑張れノート」
「oh......さ、参考までに、どう言ったノートなのかを聞いても……」
「……その時の気分によって未来の自分にアドバイスを書くためのノートです」
自爆だなぁ……。
『じばく』通り越して『だいばくはつ』までいったなぁ。
ていうか、その時の気分によってってなんだよ!
ハイなテンションでノート書いてたら、未来の自分めちゃめちゃ大変じゃねぇか。
今の状況みたいに! 今みたいに!!
「白崎さん、それ気をつけた方がいいよ。まじで」
「ん……気をつけます。あと、私のことは名前呼び捨てでいいですよ」
またいきなりハードルの高いことを……。
でもまぁ、こうして後輩が気を使ってくれてるんだし、名前呼びで呼んでみようか。
「じゃあ……芽衣?」
「……はい。ユキ先輩」
俺にできた後輩は、思った以上に不思議だった。