
線一本から伝わる
指先のかすかな不安
年賀状を持つ手が揺れる
もう幾日と会っていない誰かの夢に
夕暮れに乖離していく現実
埃の残り香が
雪のように落ちて
積もる歳月の
失っていくものだけが
溶けることもなく
ただ冷たい
糸が切れたように
電話が途絶えた
耳鳴りの余韻は
冬だからじゃない
静寂に聞こえる
張りつめた音
沈黙の言葉だ
白い空を眺めて
窓の外を歩く人が
煙草を口にしているかのように
白い息を吐く
夜明けの瞬間だった
太陽が煌々と照らす前に
それらが汚れてしまう前に
ふっと溶けるように消えていく
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