第40話 - 第四十話 爆破の左脚
「バースト……!!」
「ボン!!」
「ゾゾォ!!」
ノーマルのゾムビー達を爆発させる爆破。その目に迷いは無い。一方で壁のゾムビーは残り1体のみとなっていた。
「(呼吸を落ち着かせて……今だ!!)グングニル!!」
「カッ!!!!」
「ゾォオ!!」
主人公は壁のゾムビーと充分な距離をとっていたため、安全に敵を倒すことができた。
(これで、残りは……)
「ツトム!!」
「!」
思いを巡らせる主人公を、咄嗟に呼ぶ爆破。
「アレを見ろ!!」
爆破が指差した方向には、撤退していくゾムビー達の姿があった。
そして――、
『面白イ』
「!」
「!!」
「!?」
爆破や主人公達は、頭に直接呼びかけてくるような “音”を感じ取った。その音は、ロケットのコックピット等に居るパイロット達にも聞こえた。
『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』
“音”は徐々に消えていった。
「今のが聞こえたか? ツトム、副隊長?」
爆破は二人に問う。
「ハイっ! 聞こえました」
「こちら、コックピット内にも聞こえました、隊長」
主人公、身体はそれぞれ答える。口を開く爆破。
「そうか……。あちらは、今回は撤退する様子だったな……よし、今回、追撃はしない。切り上げよう。ツトムがグングニルを連撃して、体力を消費した様だからな。さて、地上に勝利報告でもしておいてくれ、副隊長」
「ラジャー」
身体は応答した。
「帰るか、地上に」
爆破はあっけらかんとしていた。
「正直に言うと、地上が恋しいです」
主人公が心中を吐露した。
「そうだよな! よし、さっさとロケットに戻り、地上へと帰還しよう!!」
爆破、主人公の二人は、それぞれバーストとリジェクトを放ち、移動していった。
外部ハッチを開く爆破。
「ガチャン」
「ひとまずこれでOKだな、ツトム」
「はい、お疲れ様です」
爆破の言葉に答える主人公。続けて外部ハッチを閉じ、内部ハッチを開く爆破。
「ガチャ……ガチャン」
更に口を開く爆破。
「1.5日ほど宇宙に居たか、感想はどうだ?」
答える主人公。
「ふわふわしてて、不思議な感じでした。あと、地面が無いのが不安ですかね……」
「はは、そうか。しかしそれもあと、一日と数時間で終わるぞ。良かったな、ツトム」
「は、はい……」
とりとめのない会話を交わす爆破と主人公。ロケット内部に入り、内部ハッチを閉じた。
コックピットへ移動する二人。主人公が口を開く。
「スマシさん!」
「何だ?」
「この後は何をすればいいのですか?」
「……そうだな」
暫く考え込む爆破。
「……寝て過ごすか?」
「ガクッ」
ずっこける主人公。
「ホンキですか?」
「ん、そうだが?」
爆破は至って平然としていた。
「……ホントに帰るだけなんですね」
「そうなるな」
「……」
しばらく二人は無言で、コックピットを目指した。
「ウィ――ン」
コックピットへ到着した。
「隊長、良くぞご無事で」
一番に口を開いたのは身体だった。
「ああ。そちらこそ、操縦、ご苦労だった」
返す爆破。
「ツトムぅー! 一時はどうなるかと思ったんだい!」
主人公に話し掛ける逃隠。
「はは、スマシさんが冷静だったから、難を逃れることができたよ」
笑顔で逃隠に答える主人公。
「副隊長、少し……」
「なんでしょうか?」
爆破から身体に話し掛ける。
「操縦の方だが、ここ二晩の間、夜を徹して行っている様だな?」
「はい……」
「私に代われ、睡眠時間を減らし過ぎだ」
「!」
爆破の言葉に、衝撃を受ける身体。
「そんな! 滅相もございません!!」
「いいから代われと――」
「グイ」
「言っているではないか」
操縦席から身体を押しのけて、爆破は言う。
「……分かりました。6時間程、睡眠を……」
「短い、8時間だ」
身体の言葉を遮る様に爆破は言った。
「は……はい。お気遣いありがとうございます。では……」
ミッドデッキに移動する身体。
(久しぶりに叱咤を受けた気がする……俺もまだまだだな)
身体は一人、そっと思った。主人公が爆破に話し掛ける。
「スマシさん! 申し訳ないのですが、僕たちも……」
「だい……」
逃隠も申し訳なさそうに佇んでいた。
「そうか、お前達も睡眠を取っていいぞ。育ち盛りだからな、しっかり寝て次の任務に備えるように!」
「はい!」
「だい!」
爆破の許しを得て、睡眠をとる準備をする主人公と逃隠。
「今日の戦い、勝てて良かったー。よいしょっと」
「流石の俺も、宇宙空間では戦えないんだい。よっこらせっと」
「よし、じゃあお休みー」
「だい」
二人は寝始めた。
一方の爆破――、
コックピットに居る。
(おかしい……事は上手く進んだのに、この胸騒ぎは……)
何か違和感を覚えている様だった。その爆破の左脚は、密かに紫色に変色していた。
8時間後――、
「ふぁああ、良く寝た」
主人公が目覚めた。
「よう。やっとカ、ツトム」
逃隠は既に目覚めて数分経った後の様だった。
「おはよう、サケルは朝が早いんだな」
身体も目を覚ました。
「ふ……副隊長ォオ!!」
逃隠が大いに反応した。
「まぁ、それだけなんだがな……」
「ぐはっ!!」
身体の素っ気ない言葉にダメージを負う逃隠。
「さて、行か……」
身体はコックピットへ向かった。
「僕らはストレッチでもしようか?」
「するんだい!」
主人公と逃隠は、朝のストレッチを行うようだった。身体はコックピットに着いた。
「隊長! 先程目覚めました!! 操縦を交代致します!!!」
「おお、目覚めたか、副隊長。交代、頼んだ」
身体の言葉に、応じる爆破。
「いやぁそれにしても、この周辺の景色は変わり映えしないな。退屈で退屈で……まぁ、何も起きないに越したことは無いが……」
「心中、お察しします」
爆破の愚痴にも、恭しく対応する身体。
「ふぁああ、じゃあ私は寝るぞ。後は頼んだ」
「ハッ!」
爆破はミッドデッキに移動した。
ミッドデッキにて――、
「おお、皆も起きたんだな」
爆破が主人公と逃隠に声を掛ける。
「はい! スマシさん。ストレッチをしていました」
「もう起きているんだい!」
返す二人。
「そうか、じゃあ朝食を摂った後は筋力トレーニングだな。頑張れよ」
「はい!」
「だい!」
爆破は眠りについた。
――、
「バースト!!」
「グングニル!!」
「ゾムバァ――!!」
「ゾゾォ!!」
倒れ行くゾムビー達。
「やったなツトム、これで全てのゾムビーを倒すことができたな!」
「はい! 大変な道のりでした。でも、スマシさんとだからこの偉業を達成できました」
「おめでとうございます、隊長」
「やったんだい!」
「ありがとう、副隊長、サケル!」
嬉し涙を流す爆破……。
「パチパチ」
目蓋を開く。それは涙で濡れていた。
(夢……か……)
涙をぬぐう爆破。
「ズキン」
「うっ」
左脚がひどく痛んだ。左脚に触れる。すると、そこには見慣れたとある体液、ゾムビー達の体液が付着していた。
「! これが私の末路か……呆気ない人生だった……」
「ズキン」
「うっ」
痛みが徐々に増していく。
「しかし、」
拳を握りしめる。
「仕事は最後までやり遂げないと――、な」
爆破はコックピットに向かった。