第34話 - 第三十四話 宇宙デビュー?
「ええええええええええええええええ!?」
主人公ツトム、絶叫。
「何だい何だい? ホンキかい!?」
逃隠も多少テンパっている。
「ああ、大マジだ」
平然としている爆破。
「それより、中に入るぞ。あちらを待たせてはいけない」
「まぢ……ですかぁ……」
愕然としている主人公。
「うちゅう……うちゅ……」
その横で、こちらも愕然としていた逃隠。
しかし、
「! 宇宙へ行ク? 今や俺は国外デビューしているんだい。……それが、今度は宇宙へとデビューを……。よっしゃー! 全米を泣かせてやるんだい!!」
いきなりやる気を出し始める逃隠であった。
「サケル君、ちょっと縁起悪いよ……」
一方では、相変わらずテンション低めな主人公であった。狩人部隊はhunterのラボへと入っていく。
「ツトム、ここの壁だガ、狩人のラボとは違った金属でできてるナ」
ひそひそ声の逃隠。
「うん、見たこと無いや……」
主人公もそのラボの造りに驚いていた。
『ここデス』
案内人の男が足を止めた。
「!」
「!?」
一同はとある扉の前まで案内されていた。
「ウィ――ン」
扉が開く。そこには、いかにも何か研究していそうな、白衣姿の男達が数名、楕円形の机に並んで座っていた。
「nice to meet you!」
男のうちの一人が、爆破に話し掛ける。
「nice to meet you……」
爆破は言葉を返し、二人は握手を交わした。
(挨拶は分かるけど……)
爆破を見る主人公。
(会話の全てはとてもじゃないけど分からない……分かるのは、中学生の知ってる単語だけだ……このヒト、弱点なし……?)
ジト目の主人公。
「ツトム、サケル。そして隊員達!」
爆破が口を開く。
「会話の内容は後で必ず話す。だから、暫く待っていてくれないか? 生憎、通訳は手配していないのでな」
「ラジャー!」
「だい‼」
「ら、ラジャー‼(サケル君、だい、て……)」
隊員、逃隠、そして主人公がそれぞれに応答した。
『さて、待たせて済まなかった。今回の任務について、話して頂きたい』
爆破が男達に英語で話し掛ける。一人の男が口を開く。
『使いの者がもう既に話した通り、これから少数精鋭で宇宙に行ってもらいマース。そちらの隊からは6名程、宇宙へ行ってもらう事となりマース』
『成程……承知しました。出発は今日になるでしょうか?』
『oh! 話が早くて助かりマース! 今日中に出られればベストデース』
ちらりと狩人部隊側を見る爆破。
敢然とした態度の身体、
自信満々な逃隠、
冷静な隊員達、
そして自信無さげな主人公。
(ふぅ……ツトムには少々頑張ってもらおうかな)
『分かりました。本日出発の予定で問題ありません!』
『Wow! 有り難いデース! それでは今回の航路について少し説明させて頂きマース』
先程より真剣な眼差しになる爆破と身体。
『今回、月に拠点を置いて、ヤツらを迎え撃ちに行きマース。月への行き方は月軌道ランデブー・モードという方法を執って行きマース』
月軌道ランデブー・モードとは、この様な方法である。まず、司令船と月着陸船の二つの宇宙船をセットで打ち上げる。月軌道到着後に両者を分離し、月着陸船は月に着陸する一方、司令船は月軌道で留守番をする。月探査を終えた後、月着陸船は月軌道に戻り司令船とランデブー、つまりは出会い、ドッキングする。宇宙飛行士が司令船に乗り移った後、月着陸船は投棄され、司令船のみが地球に帰還する、月軌道でのランデブーが必要なため、この方法は『月軌道ランデブー・モード』と呼ばれる。
『アポロ計画でも用いられた方法で、アポロ計画の成功例を模範とした、宇宙へのフライトとなるでしょう』
男は話を進める。
『宇宙に何度も飛び、それが成功していくうちに私たちの目標である火星移住計画も無事、達成できる事でしょう』
「!」
火星移住計画、その言葉に反応する爆破。表情がこわばる。
『? 何か気に障る事でも?』
『いや、何でもないんだ。続けて下さい』
男の問いに、当たり障りなく返す爆破。
『? 分かりました。今回、月へ行くにあたって想定される日数、時間は4日と6時間デース。まぁ、火星に行くには8カ月ほどかかってしまうので、月へのフライトは、火星到着の参考程度のデータにしかなりませんネー』
(今私たちが住んでいる星、地球。そこに居させてもらっているのにも関わらず、環境を自分たちで破壊して、住みづらくなったら地球を捨てて他の星に住もうなどというおめでたい計画も、やはりいつか実現してしまうか……)
男の話を耳に入れず、爆破は考え事をしていた。
『ですガ!!』
少し強い口調で言う男。
『今回の目的はゾムビー撲滅。火星移住計画の参考にすらならなくとも、この任務を達成しなければならないのです』
爆破は再び男の話に耳を傾ける。
『ここからは重要機密情報になります、くれぐれも他言しない様に……!』
爆破は手を上げる。そして日本語で話し始めた。
「ここから先の話は重要機密情報になるそうだ。くれぐれも他言しない様に」
「ラジャー!」
『ありがとうございます。ではこのVTRをご覧下さい』
男が話し終えると、備え付けのモニタに何か移り始めた。それはゾムビーと同じ色の、紫色の物体だった。バックは宇宙ではないかと思われる映像だった。
「カッ……キィイイ」
謎の音波が流れだす。そしてその音波はアメリカ人であるhunter隊員と、日本人である狩人隊員どちらにも聞き取れる言語で話し始めた。
『ゴキゲンヨウ、我ガ同胞ノ仇達ヨ……君達ハ我ラノ物デアルアノ石ヲ我ラカラ奪イ、地球ニ持チ帰ッタ……』
顔を見合わせる爆破と主人公。
『コノ罪ハ重イ……ヨッテ幾人カノ我ガ同胞達ハ地球ニ降リ立チ、君達ヲ襲ッタ……其レデモ君達ハ私達ニ牙ヲムキ続ケル……』
ざわつき始める狩人隊員達。
『モウ、終ワリニシヨウ』
「!」
「!?」
「!!」
一同に戦慄が走る。
『コレカラ一週間以内ニ地球ヲ一斉攻撃スル。女ガ居ルヤツハ抱イテカラ戦イニ臨ムンダナ……サラバダ』
「プチュン」
男が話し始める
『この年波に近い映像は、丁度2日前にhunterラボとMASAに届いていマース。映像は以上となりマース。そして、MASAの情報によりますと、とある人工衛星が、猛スピードで地球に飛来してくる、紫色の物体を発見したとの事です。事態は一分一秒を争いマース』
暫くの沈黙の後、爆破が話し始める。
「フー、仕方ない……な。ツトム、サケル、副隊長、そうだな、そこの二名! 宇宙へ飛ぶ支度を始めるぞ!」
「ラ、ラジャー」
困惑気味の隊員達。一人ポツンと立ち尽くす主人公。
「…………」
(そんなむちゃくちゃなぁー)
宇宙服に着替える等、準備に取り掛かる隊員達。そんな最中、爆破は思う。
(やはり、か……危ない橋と言った具合になりそうだな。果たして渡り切れるだろうか……)
その表情を伺う身体もまた、想いを巡らせる。
(隊長、大丈夫です! もしもの事があれば私が……)
『……』
『OKだ』
男と会話を交わす爆破。
そして――、
「宇宙服は着たか!? これからロケットに搭乗するぞ!!」