第29話 - 第二十九話 hunter.N州支部
小一時間が経過しただろうか。
「トントン」
爆破の肩を叩く者が一人。アイマスクを外す爆破。キャビンアテンダントがそこには立っていた。
「fish or chicken ?」
「(少し早い気はするが……)……chicken」
爆破は答える。
すると――
「fish only !!!!」
あっかんべえをせんばかりの侮辱的な顔で、キャビンアテンダントは更に返した。
「ッハ!!!!」
爆破は気が付いた。アイマスクを外す。
『本日は――をご利用頂き』
英語で機内放送が流れている。
(なんだ……夢か……)
安心する爆破。
(少し、疲れているのかもしれないな、もう少し寝よう)
暫く寝て、ここかなといった時間で昼食を口にする爆破。爆破は鶏肉を食べている。目的地まで飛行機で飛ぶ際、目的地が遠いため時差が発生する。だから昼食はここかなといったタイミングになる。起きて読書、アイマスクを付けて仮眠を繰り返した。
「ようやくか」
サンフランシスコに辿り着いた。
「しかしここが終点ではない……」
次はここ、サンフランシスコからラスベガスへ、国内線で向かう。国際線の時と同じく、手続きを踏んで、搭乗して行く。もう、時差は16時間ある。約1時間半のフライトだった。目的のN州の中のラスベガスに着いた。これから北西に、軍用車両に乗りひた走る。16時、夕方頃だった。遂に目的地である狩人(英語名でhunter)N州支部に到着した。こちらで言うラボから何者かが現れた。
「hi ! how are you」
「fine……」
どうやらN州支部の下っ端が挨拶しに来たようだ。軽く返す爆破。
『例のモノを持ってきた。このケースは中で開けよう』
『ワーオ! 興味深いネ。果たしてどのような効果を持つモノなのか』
『此処の支部長や隊長は?』
爆破が英語で聞く。
『こちらの支部、つまりN州の支部長、並びに隊長は近くのゾムビー発生現場を調査していマース。つまり、双方不在デース』
「!?」
目を見開く爆破。
(調査!? ゾムビー事件の現場対応ならまだしも、調査程度でこの話を直接聞かないという選択肢を取っただと……舐められたものだな……)
『どうかしましたカ?』
支部の下っ端が問う。
『……いや、何でもない。中へ入ろう』
狩人N州支部へ入っていく爆破、他隊員3名の一行。研究室へと案内される。研究室に入り、『石』を取り出す。石同士近づけたら光る事や、ゾムビーが近くに発生しやすくなる事、ゾムビーが石を取り込むとパワーアップすることなどを狩人関東支部の一行は説明した。
――日本。主人公の教室にて。主人公がのんびり机に座っている。
「狩人のラボが襲撃されてから、ゾムビーがめっきりいなくなって、3カ月もたつ……でも、平和が一番だよ……ふわぁああ」
欠伸をしている。朝礼が始まった。
「起立! 気を付け! れ……」
「ガラガラッ!! ダン!!!!」
「!?」
教室の戸を開ける者が! 爆破スマシだった。
「ツトム! 私だ!! アメリカへ飛ぶぞ!!!!」
およそ3カ月前、アメリカ――、
『L市にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『S市にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『D国立公園にて、ゾムビー発生! 戦闘員は直ちに現場に急行せよ!! 繰り返す……』
『クッ! またか』
『最近多すぎやしないか?』
『これじゃあ対応しきれないぞ』
狩人関東支部がhunter.N州支部に例の石を譲渡してからすぐに、ゾムビー発生率が格段に高まった。
戦地にて――、
『くたばりやがれ!!』
「タタタタタタタタ!!」
ジェームスが銃器でゾムビー達と応戦していた。
「ゾゾォ!!(いたいぃ!)」
「ゾム……(うぅ)」
次々に銃弾の餌食になっていくゾムビー達。と――、
「ゾゾォ……」
ジェームスの足場の排水口に、一体のゾムビーが。
「ゾォオオ!」
排水口の蓋をすり抜けて現れるゾムビー。
「うぉ!?」
「ゾムバァア!!(おまえも、なかまに……!)」
ジェームス目掛けて体液が襲ってきた。
「バシャアア!!」
『ジェームス!!』
『おぉお……む……ゾム……』
ジェームスの仲間の声もむなしく、ジェームスはゾムビー化した。
『クッ、許せ……』
「タタタタタタタタ!!」
「ゾムゥ……」
「ゾ……」
仲間は、ゾムビーもろともゾムビー化したジェームスを銃で葬った。
数日後――、
『大丈夫かよ!』
『もう何人も、ゾムビー化した! 戦闘能力の無い一般市民だけじゃなく、hunterや軍人もだ!!』
『上はどう説明する気だ!?』
hunterの隊員や、アメリカ軍軍人から、責任者へ向けて不信感が募る。
『もうやってられるか!』
武器を置く者が現れた。
『……』
「ガチャ」
一人また一人と武器を手から離す者が増えていった。
宇宙――。
『ソウダ。ソレデイイ。戦意ヲ喪失サセ、愚カナ人間共カラ、石ヲ取リ戻スノダ。ソシテイツノ日カ、皆デ帰ロウ。ココ、宇宙ヘ……』
ゾムビー有利のこの状況を、ゾムビーの親玉は喜んでいた。少しずつ、アメリカに暗雲が立ち込めてきた。
hunter.N州支部の一室にて――、
『クッソ! キリがねぇぜ』
『正直、もう限界かも』
ワープとサイコキネシスが弱音を吐いていた。
そこへ――、
「ウィーン」
『おいおい、サイキッカーの俺らが弱音を吐いてどうする? 他の軍人や隊員達は少しも超能力すら使えねぇのに気張ってるのによぉ』
fireが二人を諭しながら現れた。
「ウィーン」
『正直、コイツと同じ意見なのは癪だが、言っている事はもっともだ』
続いて現れたボディアーマーも言う。
『俺たちは、超能力というアドバンテージを持つ。他の人間より、戦いにおいて有利に立ち振る舞える。よって、他の人間よりも先陣を切って戦う義務があるのだ』
『そーゆーコト!』
fireは、ボディアーマーに同意見の様だ。
『……』
『! ……』
極まりの悪い思いをする、サイコキネシスとワープ。
『し、仕方ないわね』
『そーだな……』
『それでOKだぜ。次の戦いも、気張ってくれや』
fireが二人に声を掛けた、まさにその瞬間――、
『ゾムビー発生! ゾムビー発生! 発生場所はここ、hunter.N州支部近辺! 発生場所はここ、hunter.N州支部近辺! 戦闘員は直ちに戦闘態勢に入るように! 繰り返す! ……』
『言ってる傍から、やっこさん達、来やがったぜ?』
『全く、休む間もないわ』
『本当にな』
『しかし、やるしかない……』
fire、サイコキネシス、ワープ、そしてボディアーマーは歩き出す。戦地に向かて――。
Hunter.N州支部、目前にて――。
『!!』
『おいおいおい……!』
『これは……』
『まさか……』
ボディアーマー、fire、サイコキネシス、ワープは息を呑む。目の前に広がるのは、未だかつてない程におぞましい光景だった。
『1、2、3、……50……いや、100は居るか!?』
100体を超えるであろうゾムビーの大群が、そこにうごめいていた!