
夕立
突然の夕立は汗のように
昼間の熱い町を青い嘘に変えた
木立のさえずりを前に
ぼくたちはようやく本当の夏を知る
そのときにはもうヒグラシは
生まれ故郷の田舎に帰っている
懐かしい実家の匂い
隣りの家は今日もカレーだ
夕暮れは昼を裏切る
星が夜をいつも裏切るように
少しだけ濡れた洗濯物
間に合わなかったセミの音
夕立の弱まっていく重力に
入り組んだ追憶が手を伸ばす
指先に揺れる氷のような
夕日をたっぷりと含んだ冷たい涙に
大人は少し先の死を予感する
振り返ると昼は消え
詩人はどこにもいなかった
夜は未知の言語を携えて
そこには虹も星も空もなく
ただの町が海のように凪いでいた
遠くからカラスの鳴き声が聞こえる
ぼくは窓を閉める決心をする
今日の日記に夕立のことを書き忘れな
いように
ぼんやりとした眼差しを夏に向けて
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