
青白い現場監督の背中にかぶさるあの天女の入れ墨は先
日の人為的な洪水で真夜中の月に栽培したマリファナ
をつつくカラスだ。
――扉を叩く音が三回……
さようなら玄界灘あの海から流れていった黄色の風と青
い草花と死をも恐れない灰色の木漏れ日よ私は忘れな
いあの鏡のような非道徳を。
(どうか居留守を――)
白い粉だったと気がついた暁の肌にガラス細工のシャン
デリアが揺れに揺れて爆発しそうなエンジン音の上で
せせらぎのように抱きしめて。
「……息を殺して……」
私たちはみな惨めな春を売る大陸の血だ太陽が昇る前に
洞窟は海の底に沈む毎日の夢だから白昼堂々のノック
の音にもう怯えることはない。
……――。
遠ざかっていく月光の滴るような音楽に合わせて赤黒い
整体師の腕が老木の折れそうな枝を口という口に食べ
始める蝉の幼虫と空気の底でさようなら。
……。
気まぐれな処世術の半回転先の焼き色に憤慨する自称教
師の夢は非暴力のユートピアだった机の下に隠れてい
る黒猫と一緒に踊るかすかな陽光に涙して。
――扉を叩く音が三回……
鳴りやまない目覚まし時計の影に隠れたそれは押入れの
中の番の鳥といかにも足の折れそうな細い足に浮かび
上がる般若の入れ墨をつつくカラスと共に。
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