オオカミか幼なじみか選べない……。

第49話 - エピローグ~故郷~

本多 狼2020/11/23 00:33
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 それから、人間が動物を使って起こした事件は聞かなくなった。

 ベスタの死によって、まつろわぬ民は、きっといなくなったのだ。

 

「ワシが知っとる知識を、今のうちに全部伝えておくのじゃ」

「おいおい、そんなしゃべり方だけど、お前、まだ若いからな……」

 

 バズは、コルリスの街で暮らしている。

 自ら絆の民であることを公にして、リーダーとして生きていく決意を固めたのだ。

 人と動物が、これからも協力し合いながら生きていけるように。

 

「今日は、どこまで行こうかな」

「フムフム、おいしいヒマワリの咲いているところがいいフム」

 

 ヴィオとフムスは、バズと協力しながら、絆の民を探す役目を引き受けた。

 どこかで家族が生きているかもしれない。そんな希望を持ちながら。

 

     *

 

 メルとフロールは、薬の知識を生かして、病気の人や困っている人たちを助けながら、無事ポルテ村へと帰ってきた。

 

「やっと、帰ってきたね。メル」

 そう言ってフロールは、隣にいるメルの手をそっと握った。

「うん……いろいろあったね、フロール」

 メルも、その手を優しく握り返した。

 

 故郷に戻ってきたメルは、一通り懐かしい風景を眺めたあと、思い出したように森のほうへと目を向けた。

 作業場へと続く森の入り口。

 どこか寂しげな、けれど優しい秋の風が、頬をなでていった。

 

 作業場へと続く――森の入り口。

 そこに、こちらを見ているひとつの姿があった。

 それは、ゆっくりと近付いてくる。

 

「娘を救ってくれて、ありがとう――メル」

 秋風に乗って、懐かしい、そしてあたたかい声が聞こえたような気がした。

 

 その白は、忘れられない色をしていた。

 

 メルは走り出した。

 その白も走り出した。

 

 飛びついてくる白を受け止めて、メルは強く抱きしめる。

 

「ただいま――そして、おかえり……アウラ!」