オオカミか幼なじみか選べない……。

第24話 - おばあちゃんの言葉

本多 狼2020/09/20 12:15
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 メルとアウラを見送ったフロールは、目を閉じて、ひとつ深呼吸をする。

 おばあちゃんが言ってた。

 あたしらがあたふたしちゃ、だめなんだよ――苦しんでいる人を、まずはよく見てあげなさい、って。

 

 噛まれたヴィオの左足の状態を確認する。

 すぐに、水で濡らしたタオルを当てたから、傷口の汚れは落とせたはず……。

 でも、熱を持っていて、さっきより赤黒く腫れてきている。

 体が痺れているようで、呼吸は浅い。

 セルペンスの毒のことを、リュゼは「何年もかけて作り上げた作品」って言ってたわ。

 つまりセルペンスは、元々は毒蛇じゃないかもしれない。

 だとしたら、血清でなくてもヴィオを救える可能性があるはず。

 

 フロールは、以前おばあちゃんと一緒に助けた村人のことを思い出した。

 ヴィオと症状が似ているかも――。

 かばんから思い当たる薬草や道具類を取り出し、手際良く作業を始める。

 

 フロールは、ヴィオと自分の額の汗を交互に拭いながら、尊敬するおばあちゃんの言葉をまた思い出した。

 

「薬だけでは治せない。この意味が分かるかい? 使う人が少しでも無理だと思ったら、薬の神様には願いなんて届かない。治る、治してみせるという強い思いを込めるから、あたしら薬師(くすし)の調合した薬は、患者さんに染み込むんだよ」

 

 フロールに迷いはなかった。

 今できる最善のことをするだけ。

 絶対にヴィオを助ける。

 メルとアウラを信じてる。

 そして、私は私を信じる!