荻野亜莉紗2022/02/26 14:28
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 この世の終わり……



 そんな絶望で染まった顔を涙で濡らし、とある少年がベッドに転がっている。この世の全てを恨む様な表情を枕で隠し、カーテンの閉まった薄暗く狭い部屋で嘆いている。



「ううっ……僕なんか消えちゃえばいいのに」



 心の底から湧き出た言葉を、彼は恨めしそうに漏らした。ただ一人、果てしない孤独を抱え……たった十二歳の少年は、日頃のストレスや不満をこうして目から流していく。




 ドドドッ……ガッシャーーーーンッ !




 突然聞こえた大きな音に、少年はビクッと飛び跳ねた。そして、何が起きたのかと、音がしたクローゼットの方へ怯えた瞳を向ける。



 それは、まるで何かが落下してきたみたいな音だった。意味不明な状況に少年が頭を混乱させていると、クローゼットの中から生き物が動く様な物音が聞こえてくる。



 ガサガサ……カタン !



 それを耳にし、少年は良からぬ事を想像すると、自らを恐怖で支配していく。



(誰か居るのだろうか……まさか、泥棒や殺人鬼や幽霊 ?)



 彼は足を忍ばせ、恐る恐るクローゼットへ近づいていく。きっと、ねずみか何かに違いないと自分に言い聞かせ、震える手でクローゼットを開けた。



 その中に居たのは、虫や小動物なんかではなかった。なんと、そこには丸い角の様なものを生やした、小柄な少女の姿があったのだ。



 おもちゃ箱から飛び出たぬいぐるみの山に、少女はちょこんと乗っかっている。そこから、ルビーの様な輝きのある綺麗な瞳で、青ざめた顔をした少年をじっと見つめている。







「ぎゃー-------------っ !」



 あまりの恐怖に絶叫し、少年は勢いよく自室から逃げ出した。何度か足を踏み外しそうになりながら、階段を駆け下りていく彼は……どうして、僕のクローゼットの中から見知らぬ女の子が出てくるのかと、大きな疑問を抱いていた。



 その謎の少女との未知の出会いが、これから起きる全ての始まりとなる……



 ただのいじめられっ子なこの少年、上野飛華流うえのひかるはまだ何も知らない。日常に潜む非日常へと、己が少しずつ引きずり込まれていく事さえ……今はまだ気づけやしない。



 

 (えっ ? 何だよこの急なホラー展開っ ! あれって、リアルな人形か ? きっと、誰かが買ってあそこにしまったんだよな ?) 



 (でも、さっきアレと目が合ったぞ ? それに、瞬きもしっかりしていた)



 (もしかして、さっきのは生きた人間なの ? だとしたら、誰だよあの子……あの頭から生えた、角みたいなのは何 ? 頭の上で、カタツムリでも育ててるの ?)



 飛華流ひかるの脳内は、パニックを起こしていた。