花が好きな君が好き

第4話 - 想いは重なる

あおねこ2022/04/19 17:48
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雪見の強い眼差しに負けて一晩泊めてもらうことになったこの夜。

最初は緊張していた私も、付き合いの長さのおかげか徐々にこの非日常感に慣れてきた。

夕ご飯は雪見が作ってくれた。

初めて彼女が料理が出来ることを知れて「たまにはこういうのも悪くないな」と思い直す。


「着替え、ここに置いとくね」

お風呂のすりガラスの向こうから声が聞こえて心臓が跳ねる。

ここからはいかに自制心を保てるか己との勝負だった。

意を決してお風呂から上がり、彼女が用意してくれた服に袖を通す。

私と雪見では身長差がかなりあるが、少し大きめのものを用意してくれたのかサイズは問題なかった。

しかしふわりと全身に纏った雪見の匂いに身体が火照る。

少し甘いような、花のような優しい匂い。

深呼吸して何とか気持ちを落ち着けて、雪見にお風呂を交代するように告げた。

_________


「ふぅ…!今日暑かったからさっぱりしたよ~」

雪見がお風呂から出てきて、冷めた顔の熱が一気に戻った。

ショートパンツに大きめのTシャツ。

ありきたりだが私の平常心を奪うには充分だった。

まだ湯冷めしていない身体で隣に座る雪見の顔がまともに見れない。


そんな私をまじまじと雪見は見つめ、何か迷っているようなそぶりを見せた後、少し言葉を震わせて声を発した。


「ねえ。かなめはあたしのこと、どう思ってくれてるの…?」


反射的に顔を上げてしまった。

どういう意図で質問しているのか分からず混乱するばかりの私に、雪見はさらに言葉を続ける。


「わたしが今日じゃないとだめって言った理由。あのね…。」

ふわっと柔らかい髪を揺らし、雪見が私の耳元に顔を近づけて。


「今日ね、両親が留守なの。かなめとふたりになれる、特別な日。」


そう囁いて顔を背けた雪見の顔は赤い。

脳処理が追い付かず、震える声で問いかける。

「どういう意味…?私と二人きりになりたかったって…」

言い終わらないうちに、雪見は言葉が溢れ出すように話し始める。

「ずっと仲良くて最初はあこがれだったの。かなめみたいにかっこいい女の子になれたらなって思って。でもいつの間にか自分が無意識にかなめの事を目で追いかけてるのに気づいちゃって…」


自分の鼓動がうるさい。

雪見の言葉を一言一句聞き取りたいのに。


数秒の静寂が続いたのち、私が欲しくてたまらなかった、切望した言葉が雪見の口から零れた。



「わたしね、かなめの事がすき…」