味志ユウジロウ2020/08/01 12:56
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耳に飛び込んできたのは、近くの波の音と遠くの海鳥の鳴き声。

更に耳を澄ませば、音楽が聞こえる。かすかに。そしてかすかに。

音が聞こえそうな程、照りつける太陽。

波と反対側からの、リズミカルなクラクション。

ココナッツが混ざったような、潮の香。

口の中の、血の味。サラサラの、砂。

砂が入らないように瞳を開ければ、眼前に広がるモノクロームビーチ。

視覚からの情報は、目の奥に鉛のような鈍色にびいろの痛みを与える。

どれくらいの間、僕はここで気を失っていたのだろうか?

どれくらいの時間をかけて、僕はここまで流れ着いたのだろうか?

どれくらい考えたら、自分の問いに答えが導けるのだろうか?

そんなことをただ漠然と思案しているのには理由があった。

僕は自分自身に関することを全て忘れてしまっていたのだから。

考えることが面倒になり、ゆっくりと目を閉じた。

沈黙に飽きたら、きっとまた同じ問いを繰り返すのだろう。

僕は再び、いや何度目かの眠りに落ちた、この美しいビーチで。